〈北海道ガーデン街道 vol.2 秋編〉第二話 十勝平野を一望する庭 「十勝ヒルズ」
2018.11.06
旅travel
2018年9月、震災の風評で北海道ガーデン街道が寂しい状況と聞き、急きょ、秋真っ盛りの帯広~旭川を旅してきました。
「十勝千年の森」に続いて向かったのは「十勝ヒルズ」。
千年の森が大地なら、ここは空の大きさを感じる場所。気持ちのよいお天気の中、ゆっくりとガーデンを楽しみます。
十勝平野を望むスカイミラー
空を映したように植えられた青いサルビアが広がる「スカイミラー」。空と花の間には十勝平野が広がります。
台風の影響でシンボルツリーだった白樺は残念ながら折れてしまいましたが、その分、空がより近く感じられるよう。
ナチュラルオアシスとトンボ池
西洋ヤナギが植えられた「ナチュラルオアシス」。すり鉢状になっているためか、鳥や虫の鳴き声が響いて、とてもリラックスできる空間です。ゆっくりと池の周りを廻りながら、光で変わる水面の変化や響く音を楽しみたい場所。
「トンボ池」と呼ばれるだけあって、秋の真っ盛りのこの時季はたくさんのトンボが飛び交っていました。水面に浮かぶ黄色い花は「浅沙(あさざ)」。他にもこの池には睡蓮やガマ、アシなどの水生植物が。
どの木よりも先に色づきだした「フリーマニーカエデ・オータムブレイズ」。この木はギンカエデとベニカエデを交配した品種。葉の裏は銀色に近く、幹も同様。これはギンカエデという品種の特徴で、真っ赤になる葉の表はベニカエデの特徴を受け継いだ、美しい木です。
秋の花々
この時季ならではの花々もガーデンを彩っています。
華やかな中に深みのある花色はこの季節ならでは。薄紫とピンクの「アスター」と、ダークピンクの「ペルシカリア」が満開の小道。
「ルドベキア タカオ」
北米原産のキク科の植物。約25種類あるルドベキアの一種で、草丈1mほどになり、夏から秋にかけて3~4cmの花をたくさん咲かせます。ルドベキアは黄色の花色以外にもオレンジや茶系も存在し、花型も一重以外に八重、小輪から大輪まで様々なタイプがある、その明るい色合いからボーダーガーデンなどで人気の花です。
「ゲラニウム ジョリービー」
同じフウロソウ科のゼラニウムとよく似た名前ですが属が異なります。多くの品種がありますが、このジョリービーは花が長く楽しめ、初夏から冬まで咲く場合も。寒さに強く、秋が深まってくると、花色がより鮮やかになります。
こちらは自生種の「エゾナデシコ」。ガーデンを散歩していると、植物との思わぬ、うれしい出会いがあります。
食を楽しむ
今回の十勝ヒルズではガーデン以外にもうひとつの楽しみが……
それは”スカイミラー”を望む、絶景レストラン「ファームレストラン ヴィーズ」でのランチ!
十勝ヒルズのコンセプトは「花・食・農」のテーマパークということで、ガーデンと共に食にも力を入れていて、ヨーロッパスタイルの「ヴィーズ」と、和食の「四分分度(しぶぶんど)」といった2つのレストランで、自家栽培の野菜を使った食事が楽しめます。
「ファームレストラン ヴィーズ」のヘッドシェフを務めるのは、ハンガリーの名店などでシェフを歴任されたモルドヴァン・ヴィクトルさん。
美食の国と称されるハンガリーの味と十勝の食材をたくみに使った料理は、こちらの店ならではのもの。特に珍しいのはハンガリー政府が食べられる国宝として認定した、マンガリッツァ豚を使ったメニューです。
そんな訳で今回はマンガリッツア豚の様々な味わいが楽しめるコースをいただきました。
初めて頂いたハンガリー料理はどこか懐かしさのある、やさしい味。どの皿もとても丁寧に作られていることがわかる、手の込んだ料理です。
ガーデンの中には何種類もの果樹があり、立派な栗がたわわに実っていました。
もうすぐハロウィン。さすが十勝ヒルズ!というほど、色とりどりのユニークなカボチャがデコレーションされていました。
ガーデナーからのことば
ヘッドガーデナーの高田玲子さんとも一年ぶりに再会!
食べ物の香りがするバラを集めたローズガーデンの花がほとんど終わってしまったこと、台風でシンボルツリーが折れてしまったことを申し訳なさそうに伝えてくださいました。
それでも、秋の花や果物が実るこのガーデンは見ごたえ十分。高田さんのたゆまぬ努力が伝わってきます。
バラの冬支度で忙しい中、このガーデンへの思いを書いていただきました。
スカイミラーでメッセージを考える高田さん。絵画のような風景です。
「庭をのんびり散歩してくださるお客様を見るのが一番うれしいです。」
これだけのガーデンを、常に見ごろの状態に保つのは、日々コツコツと植物に向き合う以外にないことでしょう。美しい景色を当たり前にする、丁寧な仕事ぶりに頭が下がる思いでした。
北海道は元気です。
北海道胆振東部地震の一報を知った時、まず思い浮かんだのは、私の北海道の唯一の知り合いであるガーデン街道の皆さんでした。
被災の状況が報道される中、あの庭はどうなっているのだろうかと心配が募り、お目にかかったガーデナーの皆さんに連絡を取り、状況を伺いました。
判ったのは、震災発生時は停電こそあったものの、どのガーデンも数日後には通常に近い公開を始めたこと。
震災の影響はほぼ無く、安全だということ。
でも、北海道の震災ということで、帯広も旭川も被災しているように思われて、入場者が激減していること。
花屋としてできることは何か。
被害にあわれた方々に寄付をすることもひとつの方法だけれども、花屋は花屋のやり方で応援する方法はあるだろうか…
何より、紅葉が始まった美しい秋の庭が、人の目に触れないまま冬じまいしてしまうのは本当に惜しい。
こんな時だからこそ、植物が持つ力が役に立つのではないか…
そんな思いから、北海道ガーデン街道の魅力をお伝えすることで、ひとりでも多くの方にガーデンを知って、訪ねてもらうことが、花屋にできる復興のお手伝いではないかと考え始めました。
「微力だけど無力じゃない。」
かつて神戸の震災時に50ccバイクに乗って、被災者が欲しいものを細かく聞き取りながら、必要な物資を届けるボランティアをなさっていた作家の田中康夫さんの言葉です。
大きな力にはなれないけれど、私たちにできることをやってみる。
それが今回の旅のテーマです。
震災発生から20日後、植物も人も元気な「北海道ガーデン」の姿を7回に渡ってお伝えします。
□関連記事
〈北海道ガーデン街道 vol.3 初夏編〉第三話 丘の上で絵画のような世界に浸る「十勝ヒルズ」
〈北海道ガーデン街道 vol.1〉第三話 丘の上のガーデンで楽しむ花・食・農「十勝ヒルズ」
北のオアシス 旬・花・祝・豆 十勝ヒルズ
北海道中川郡幕別町字日新13番地5
http://www.tokachi-hills.jp
開園期間:4月下旬~10月中旬
冬季休業期間があります。営業時間、入館料などの詳細につきましては十勝ヒルズのWEBサイトをご覧ください。
- 花毎TOP
- 旅 travel
- 花の旅人