花の旅人

物語のある、
花の名所を楽しむ旅

vol.4 〈北海道ガーデン街道・秋編〉第七話:山と森と花園のリラックス空間 「大雪森のガーデン」

2018.11.27

travel

2018年9月、震災の風評で北海道ガーデン街道が寂しい状況と聞き、

急きょ、秋真っ盛りの帯広~旭川を旅してきました。

帯広の十勝千年の森から始まったこの旅も、今回の「大雪森のガーデン」でゴールを迎えます。

「大雪森のガーデン」は国の天然保護区域である大雪山系の大雪高原旭ヶ丘にあり、上野ファームの上野砂由紀さんがデザインした「森の花園」と笠 康三郎さんがデザインした「森の迎賓館」の2つの趣の異なるガーデンと、北海道出身の三國清三シェフが手掛けるレストラン、そして宿泊施設が点在する複合施設。
今回連載している北海道ガーデン街道の中でも、もっとも標高の高い場所に位置するため、他のガーデンとは植物の見ごろが異なったり、ここでしか出会えない植物があるユニークなガーデンです。

大雪山系の気候は内陸部にあってしかも標高が高いため、夏と冬しかないともいわれるほどで、その地理と気候風土から高山植物の宝庫として名高く、日本国内で最も早い紅葉が始まる地です。
標高650mに位置する「大雪森のガーデン」も同様で、5月に水仙が咲き、6月でもチューリップやオオバナノエンレイソウなどの春の花が残ったまま、夏の花が咲き出すといった、気温が低い高山ならではの花景色が楽しめます。
そのため、私が訪ねた9月の終わりでもオミナエシやアスターなどの秋の花と一緒に、アナベルやエキナセアといった夏の花が咲いている不思議な光景が広がっていました。

花が主役の「森の花園」と、緑が主役の「森の迎賓館」、2つのガーデンを順を追ってご紹介します。

< 森の花園 >

上野さんがデザインした「森の花園」は約700品種の植物を使って、それぞれの植物が持つ特徴を組み合わせた「大雪な庭」「四季のすみか」「花の泉」「親しみの庭」「カムイミンタラ」の5つのテーマから成るガーデンです。

*提供:大雪森のガーデン

こちらの写真は大雪森のガーデンからお借りした6月の「大雪な庭」。
水色の花は「蝦夷瑠璃草(えぞるりそう)」。

北海道の高山だけに自生し、釣鐘型の花を咲かせる、貴重な美しい高山植物です。山に登らなくてもこうした植物を見ることができるのは、標高650mの高さに位置する、このガーデンならでは。

大雪な庭

「大切」と「大雪」を重ね合わせ、上川を象徴する大雪山系の植物を大切にしたいという想いを込めて、大雪山で見られる高山植物や北海道の自生種を植栽したのが「大雪な庭」。
ゆるやかな坂道を大雪山系に見立て、50種類以上の高山植物が自生している標高の順に植栽されています。

四季のすみか

「春、夏、秋、それぞれの季節を司る妖精住んでいる」という、上野さんならではのロマンテックなデザインのガーデン。
開花期が同じ植物を同じエリアに植栽しているので、季節の移り変わりとともに全く異なる表情を見ることができます。
9月の終わりはユーパトリウム・アトロプルプレウム、ダリア、ルドベキア、サラシナショウマなどが見ごろを迎えていました。

*提供:大雪森のガーデン

花の泉

絨毯のように広がるグランドカバープランツの中から春はチューリップやスイセン、初夏はアリウム、秋はオミナエシなどすらっと茎を伸ばす植物で泉が湧く様子を表現したガーデンです。
写真は6月の様子。泉のように広がった青いアジュガの中にチューリップや水仙がぴょんぴょんと飛び出して、ブルー&ホワイトの美しい景色を作り出しています。

*提供:大雪森のガーデン

親しみの庭

色、香り、形、不思議な手触りなど個性的な特徴を持つ植物が植えられた「親しみの庭」。触れたり、香りをかいだり、と五感で楽しんで花を身近に感じて欲しいという願いが込められています。
クニフォフィア”パーシーズ プライド”のような面白い形の花やオリエンタルリリー”カサブランカ”のように香りを楽しめる花など五感で楽しめる個性的な特徴を持つ植物を集めています。

カムイミンタラ

アイヌ民族の言葉で”神々が遊ぶ庭”という意味の「カムイミンタラ」はテーマガーデンの中で最も広く、季節の花が咲き誇るガーデンです。

カムイミンタラに咲いていた、稲穂のような形の鮮やかなピンクの花がユニークなアスチルベ・キネンシス”スペルバ”。

< 森の迎賓館 >

森の花園を奥に進むと、だんだんと緑が深くなり、樹木や山野草の庭「森の迎賓館」へと続きます。
ゆるやかな起伏のある地形と樹木と自生種を中心とした草花で、まるで山登りをしたかのような気分になれる場所です。

森のゲートウェイ

カラフルな花園と森をつなぐ入口(gateway)のガーデン。

森の絨毯

「大雪山の草原」をイメージしてつくられたのが「森の絨毯」です。

この地に生き続ける、自然の草花がゆるやかな斜面に広がっています。

森のリビング

暖炉を囲むようにデッキチェアが置かれ、リビングの雰囲気が感じられる場所。
この一角にはピザ窯を備えた「森のダイニングキッチン」や、カウンターテーブルに小さな草花が植えられた「森のBar」があって、料理や飲み物が楽しめるイベントが行われることも。

癒しの谷

木陰が広がるテラスは、田園風景が一望できる場所。日がな一日こんな場所で読書をして、時々遠くを眺める……そんな楽しみ方をしたい、とてもリラックスできる空間です。

森の博物園

北海道に自生する、約70種の植物を集めた見本園が「森の博物館」。
昔から暮らしに役立てられていた植物について知ることができる、屋外の博物園です。
9月の終わりには生薬として使われてきた歴史があるエゾリンドウが咲いていました。

今回案内していただいた。ガーデナーの影浦さんからメッセージをいただきました。
「植物にとっても 人にとっても 心地よい庭でありたい」

本を片手に一日をゆっくりと過ごす、そんな風にこのガーデンを楽しんでほしい、と影浦さんはいいます。
登山をせずとも、山や森の雰囲気を存分に感じられてリラックスできる……「大雪森のガーデン」は通り過ぎるだけではない、ガーデン本来の楽しみがある、そんな場所です。

 

今回で北海道秋編は完結。次回はまさに桃源郷、知られざる梅の名所を訪ねます。

 


北海道は元気です。

北海道胆振東部地震の一報を知った時、まず思い浮かんだのは、私の北海道の唯一の知り合いであるガーデン街道の皆さんでした。
被災の状況が報道される中、あの庭はどうなっているのだろうかと心配が募り、お目にかかったガーデナーの皆さんに連絡を取り、状況を伺いました。

判ったのは、震災発生時は停電こそあったものの、どのガーデンも数日後には通常に近い公開を始めたこと。
震災の影響はほぼ無く、安全だということ。
でも、北海道の震災ということで、帯広も旭川も被災しているように思われて、入場者が激減していること。

花屋としてできることは何か。
被害にあわれた方々に寄付をすることもひとつの方法だけれども、花屋は花屋のやり方で応援する方法はあるだろうか…

何より、紅葉が始まった美しい秋の庭が、人の目に触れないまま冬じまいしてしまうのは本当に惜しい。
こんな時だからこそ、植物が持つ力が役に立つのではないか…

そんな思いから、北海道ガーデン街道の魅力をお伝えすることで、ひとりでも多くの方にガーデンを知って、訪ねてもらうことが、花屋にできる復興のお手伝いではないかと考え始めました。

「微力だけど無力じゃない。」
かつて神戸の震災時に50ccバイクに乗って、被災者が欲しいものを細かく聞き取りながら、必要な物資を届けるボランティアをなさっていた作家の田中康夫さんの言葉です。
大きな力にはなれないけれど、私たちにできることをやってみる。
それが今回の旅のテーマです。

震災発生から20日後、植物も人も元気だった「北海道ガーデン」の姿をこれから7回に渡ってお届けします。

大雪森のガーデン

〒078-1721  北海道上川郡上川町字菊水841番地8

https://daisetsu-asahigaoka.jp/
2019年の開園期間  4月27日(土)~10月14日(月)
営業時間、入館料、定休日などの詳細につきましては大雪森のガーデンのWEBサイトをご覧ください。