〈山陰地方編〉第二話 1日限りの奇跡の絶景「黄金の池泉牡丹」に出会う【後編】
2018.06.11
旅travel
庭園中心部に位置した翠柳庵は新緑越しに池泉牡丹を望める鑑賞スポット。由志園の中には数々のお食事処や、庭園を眺めながらお抹茶をいただけるお休み処が点在しています。
出雲の国の箱庭、由志園ができるまで。
中海(なかうみと鳥取県境港市・米子市にまたがる湖)を模した池泉(ちせん)を望む、お休み処、翠柳庵(すいりゅうあん)で池泉牡丹の企画に携わっていらっしゃる、由志園の企画室長門脇竜也さんからお話を伺いました。
初代園主が夢見た庭園
編集スタッフ I :
門脇さん:
由志園のある松江は茶処、菓子処としても有名。翠柳庵では牡丹にちなんだお茶席が用意されていました。
編集スタッフ I :
門脇さん:
その結果、島全体が1000年もの間、草原で覆われることとなり、結果として腐食を大量に含んだ、肥沃な『黒ボク土』が生まれました。
この肥沃な土壌が多肥を好む牡丹の栽培に適していたのです。
牡丹が大根島に伝わったのは 300 年前ですが、本格的に栽培が行われるようになったのは昭和 30 年頃です。
その頃、芍薬の苗に牡丹の芽を継ぐという新しい技術が開発されたのをきっかけに、男性が牡丹の苗木を作り、農家の主婦が全国へ牡丹の行商に出るようになりました。
その後、海外への輸出も始まり、大根島の牡丹は世界に知られるようになりました。いまでは、町の基幹作物となり、島根県の花にも指定されています。
由志園にある「牡丹の館」では開花調整の難しい牡丹を独自の技術で開花させ、一年中鑑賞することができます。 牡丹が映える、苔をふんだんに使ったデザインは、英国チェルシーフラワーショーで幾度もゴールドメダルを受賞した庭園デザイナー 石原和幸氏によるもの。
3万輪の黄牡丹を池に浮かべる
編集スタッフ I :
門脇さん:
2017年で6年目になりますが、最初は浮かべた牡丹の上下がひっくり返ってしまったり、流れてしまったりとうまくいきませんでしたが、試行錯誤の結果やっと現在のような展示方法となりました。
編集スタッフ I :
門脇さん:
ハイヌーン、王冠、金晃(きんこう)など一株 8000 円近くする高価な花を島中から協力を仰ぎ、3万輪が集まりました。
高価な花が集められるのは、近年黄色品種の人気が高まっていることと、日本一の産地だからこそなのです。
やはり一番の見どころは、大根島とその周辺の風景を模した池泉池を望むこの場所。黄金と呼ぶにふさわしい、輝くような光景と香りが広がります。
喫茶「一望」からも池泉牡丹の絶景が。
やわらかな花びらが幾重にも重なった黄牡丹が更に集まって、光り輝くような印象に。
牡丹の香りに包まれて
門脇さん:
企画室長でありながら「何でもやってみないと分からない」と、この日も門脇さんは朝 6 時には池に入り、牡丹を浮かべていらしたとのこと。各地からわざわざ足を運んでくださるお客様のためにも、いつ来ても驚きと感動のある庭、そして新しい日本庭園文化を創造していきたいと門脇さんは語ります。
ごく短い期間に現れる奇跡の絶景。写真だけでは分からなかった、色と香りに圧倒された体験は、夢のようなひとときでした。
*写真提供:由志園
牡丹の見ごろに合わせて毎年行われているのが、投票により決定する牡丹番付。今回の黄金の池泉牡丹にも沢山使用されている「黄冠」が東の横綱に。西の横綱も黄牡丹。個人的に魅力的だった花は写真右の「笑獅子」。
お土産処では牡丹や花柄のパッケージが素敵なオリジナルのかりんとうなど、由志園ならではのお土産も充実しています。
更に旅は続きます。次回第三話は由志園とあわせて楽しみたい、足立美術館へ。
由志園
島根県安来市古川町320
tel 0852-76-2255
http://www.yuushien.com
営業時間 9:00~17:00 (年中無休)
池泉牡丹開催予定期間 2018年4月28日~5月 (気候により内容、ボリューム、会期が変更する場合があります。)
※入園料、イベントなどの最終情報については由志園HPをご覧ください。
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