花の旅人

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〈山陰地方編〉第三話 庭園日本一「足立美術館」へ

2018.06.16

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<生の額絵>庭園を絵画に見立てた窓。刻々と移ろう庭を切り取りたくなる人気のフォトスポット。

庭園という絵画

由志園から車で走ること小一時間。鳥取県との県境に海外の専門誌で何度も庭園日本一に輝く「足立美術館」があります。
地元、安来(やすぎ)出身の実業家であり創設者の 足立全康氏の「庭園もまた一幅の絵画である」という信念のもと、5万坪にも及ぶ広大な敷地内に異なった趣の日本庭園が配され、美術館の中を巡りながら庭と共に鑑賞できるように設計された美術館です。

アメリカの日本庭園ランキングで14年連続1位に選ばれ、毎年更新されている庭園日本一の石碑。「ミシュラン · グリーンガイド · ジャポン」では3つ星に輝く。

日本庭園 × 日本画

足立美術館は横山大観をはじめ、竹内栖鳳、川合玉堂、榊原紫峰、上村松園など、近代日本画壇の巨匠たちの名品や北大路魯山人と河井寛次郎の陶芸作品、林義雄らの童画、漆芸、木彫などを約1‚500点所蔵。
庭園の四季に合わせて年 4 回の展示替えがあり、私たちが訪ねた時期は春季特別展が行われていました。
館内の通路には庭を鑑賞するための窓がそこかしこにあり、窓が額縁となって、絵画のような眺めが楽しめます。各展示室では企画展が開催され、展示室を結ぶ通路から見た庭園の景色が一体となり、作品がよりリアルに感じる工夫が凝らされています。
日本庭園と日本画の調和を考えられて作られた美術館ならではの、心に残る魅せ方です。

白砂青松庭

ロビーから望む「枯山水底」。借景の山並みと庭の一体感が素晴らしい足立美術館の主庭です。

庭園日本一の矜持

広大な庭園はいつ、どの窓から見ても人の姿はなく、庭の手入れをする姿も見当たりません。でも、どこを見ても不思議なほど枯れた葉や枝などがなく、まさに絵に描いたような庭が存在しています。
あくまでも庭園は「一幅の絵画」であるため、鑑賞者の視界に人が入らないよう、庭園は中に立ち入ることはできないのです。刻々と移ろう庭園を維持し続ける、徹底した信念に庭園日本一の矜持を感じ取りました。
私たちが訪れたのは新緑の季節でしたが、紅葉や雪景色など四季それぞれ景色が一変することでしょう。

陶芸家 · 河井寛次郎のことば

美術館別棟の陶芸館には、安来市出身の陶芸家であり、日本民藝運動に深く関わった、河井寛次郎の作品を集めた「河井寛次郎室」があります。寛次郎は生涯に渡って「暮らしが仕事 仕事が暮らし」との言葉と共に、さまざまなスタイルの作品を残した、土と炎の詩人とされる陶芸家です。
こちらには約200点の作品が所蔵され、常時約50点が展示されています。

展示された陶芸作品もさることながら、この部屋に掲げられていた寛次郎の言葉に強く惹かれました。
印象的なこの言葉で、足立美術館編を締めくくりたいと思います。

*足立美術館は庭園のみ撮影が可能です。 この写真は特別に撮影許可を得ました。

次回は島根といえば、の出雲大社編です。

足立美術館

島根県安来市古川町 320
tel 0854-28-7111
http://www.adachi-museum.or.jp
休館日  年中無休 (新館のみ展示替えのため休館日あり)
閉館時間 9:00 ~ 17:30 (4月~9月) 9:00 ~ 17:00 (10月~3月)
※入館料、展示内容などの最新情報については足立美術館 HP をご覧ください。