第九十八話 「一月 小寒 大寒」
2025.01.05
暮life
季節のリズム
新しい年のめぐりがはじまりました。
今年は格段に寒い冬。
南関東でも久しぶりに美しい自然の氷を幾度か目にすることができるかもしれないと期待しています。
長い年月に渡る日本の歴史からすれば凛としたこの冷たい空気と新年の取り合わせはそれほど古いものではありません。
古えから続く本来のお正月の季節とは梅の花が開いていく、明るい光の中で迎えるものだったと頭ではわかっていても、生まれた時から感じてきた季節と行事の組み合わせはもうすっかりと人生に馴染んでいます。
行事を新暦で行うか、旧暦で行うかはさておき、気候変動などによりその表情は変わってきてはいるものの季節の節目、うつりかわり、そしてリズムは変わることなく時を刻んでいます。
さて、今時分の鮮明な冬の星を見上げていると無数にある星の一つに今、立っているのだという事実がふいに胸に迫ってまいります。
ちなみに季節、というのは地球と同じように無数にある星の一つ太陽の、ちょっとした傾きや高度などにより生まれるものです。
だとすれば季節のリズムとは星のリズム。
季節の草木花を楽しみ、年中行事や祭を楽しむことは季節のリズムを感じながら生きること、すなわち星を日々の暮らしに導くこと。
自然の星のリズムとともに生きることでもあります。
憂いすぎることなく、浅く、深く。
長いようで短い、短いようで長い人生を
豊かに生きていくために季節の草木花とともに行事や星のリズムを楽しんでまいりたいと思います。
かどれいの餅
新年のご挨拶のことを「かどれい」と呼びます。
玄関先でお祝いのことばを伝えてご挨拶するから門の礼。
その際に持っていく餅がかどれいの餅です。
縁起のよい色や稲穂を添えて祝祭らしい餅に。
冬の硝子
山茶花を硝子のうつわに入れて。
山茶花、椿、蝋梅、梅、桜と続く木の花の季節がはじまりました。
冬の花と硝子を合わせると暑い時期とは全く異なる趣きを楽しむことができるでしょう。
凛とした冷たい空気とガラスの表情は似ています。
広田千悦子
文筆家。日本の行事・室礼研究家。日本家屋スタジオ「秋谷四季」(神奈川県)などで季節のしつらい稽古を行う。ロングセラー『おうちで楽しむ にほんの行事』(技術評論社)、『鳩居堂の歳時記』(主婦の友社)ほか、著書は20冊を超える。
写真=広田行正
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