薔薇のすすめ

東京・練馬にある「四季の香ローズガーデン」から、
季節とともに移ろうバラの様子や育て方のヒントをレポートします。

第五話 「薔薇の実」

2019.12.13

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「パブ・ロック」Pub Rock 作出年:2013年│作出者:忽滑谷史記│作出国:日本│系統:シュラブ│咲き方:四季咲き│花径:中輪│香り:強香(ダマスク/フルーツ)

十二月に入り、バラの季節も終わりに近づいてきました。
それでも、四季咲き性を持つバラの中には、この寒さの中でも健気に花を咲かせているものもあります。
霜が降りると花弁が汚く痛んでしまうため、もう少ししたら見納め。
次のバラの季節になる春まで一休みとなります。

「ノイバラ」Rosa multiflora│原産地:日本│系統:野生種│咲き方:一季咲き│花径:小輪│香り:中香(スパイス)

ちょうどこの時期には、バラの実が綺麗に色づいています。
「ノイバラ」と呼ばれる日本の野バラの実です。
その花は、第一話でも紹介させて頂きました。

寒さが深まると、鳥がついばみにきます。
ですが、周囲に柿のような美味しい食べ物が何もなくなってからようやく食べられ始めます。
鳥にとってそれほどご馳走というほどのものではないのかもしれません。

ノイバラの実は、花材としてもアレンジメントやリースなどによく用いられています。
花屋などで見かけたことがあるのではないでしょうか。
上手に乾かすと、実が綺麗なままドライフラワーになって、長い間楽しむこともできます。
ちょっとした器に飾っても、ただそのまま置くだけでも、温かい雰囲気が演出できます。

バラは、丈夫な台木に接ぎ木をして品種の苗を育てるのが一般的です。
バラの接ぎ木の台木はノイバラを利用しています。
赤い実の中には、小さな種が10~15粒程度入っています。
冬の間に、この種を取り出して播くところから台木作りがはじまります。
こんな小さな種から、ノイバラは力強く、逞しく、旺盛に育ちます。
植物の生命力にはいつも驚かせられるばかりです。

忽滑谷 史記(ぬかりや ふみのり)

バラ育種家。埼玉県飯能市を拠点に、オリジナルブランド『Apple Roses』品種の育種・生産およびネットショップでの販売を行う。病気に強く誰でも簡単に育てられる、魅力的な品種づくりを目指している。