第十一話 「夏の手入れ」
2020.08.23
知study
「ラブ・シック」Love Sick 作出年:2019年│作出者:忽滑谷史記│作出国:日本│系統:シュラブ│咲き方:四季咲き│花径:中輪│香り:強香(ダマスク/ティー)
長かった梅雨も明け、暑い日が続いています。
人間にとって耐えられないくらい暑い日でも、夏に強い植物は日射しを受けて元気に生育をしています。
8月のバラ苗の生産畑の様子
バラは基本的には暑さに強い植物です。
日射しをたっぷり浴びて、夏の間にすくすくと生長します。
ただ、一部の品種においては夏の暑さで下葉が落ちてしまったり、新芽が縮れたようになってしまう品種がありますので、そのような品種は鉢植えでしたら、遮光したり、日陰に移動してあげるのもよいでしょう。
〇 水やり
鉢植えの場合、一番気をつけなければいけないのは水やりです。
最高気温が35℃に近づくような日には、水切れはバラにとって致命傷になってしまう可能性があります。
せっかく育てているバラですから、水をやり忘れて枯らしてしまうのは避けたいところです。
ただ、水やりは、夏の暑い日であっても、午前中に1日1回のみ、たっぷりと行うのが理想です。
そうすることで、やや用土が乾いた状態で夜を迎えることができます。
根は酸素を取り込んで呼吸をして伸びています。
ずっと湿った状態が続くと生長ができなくなってしまいます。
水を与えすぎて、ずっと湿った状態にしていると「根腐れ」と言われるような根の不調の原因となってしまいます。
そのため、乾いていても問題のない夜の時間に、用土を乾かすことが、根を生長させて株を健全に生長させるコツなのです。
一日一回の水やりでは、夕方まで水が持たない、と思う方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに、写真(上)のように、元気に芽が伸びている状態ですと、夕方を待たずに萎れてしまうことがあります。
そのような場合は、摘芯(「ピンチ」とも言います)を行うことをおすすめします。
摘芯前の苗。このように新しい枝が伸びている状態は葉からの蒸散が盛んで、用土が乾きやすい。
夏でも四季咲き性を持つバラは、繰り返して花を咲かせます。
ただ、高温においては、せっかく花が咲いても1日で花が終わってしまい、綺麗な状態で楽しむのは難しいです。
そのため、夏の間は花をあきらめて、摘芯を行うことで土の乾きを抑えることをおすすめします。
摘芯後の苗
新しく伸びている枝を葉2~4枚ほど残して切り戻します。
イメージとしては、花がら摘みを行う感じでよいと思います。
切り戻したところから、新しい枝が2~3本伸びて来ますので、枝数も増えて一石二鳥です。
つるバラのような四季咲き性のない品種でも、摘芯を行うことで、株をコンパクトにして枝数を増やすことができます。
このように新芽を少し切り戻してあげると、1日1回の水やりで問題なくなります。
葉が病気になっていたり、調子を落としていたりするような苗は、1日1回の水やりでも多い場合があります。
表土が乾いているのを確認してから水を与えるようにすることをおすすめします。
水やりは用土の表土が乾いてから与えるのが望ましい
ちなみに、地植えの場合は、実はそれほど水は必要ありません。
暑そうだからと言って、毎日水を与えたりしていると、根が生長できずに、逆に調子を落としてしまいます。
雨が全く降らず、萎れているような時にだけ与えることをおすすめします。
ただ、乾きやすい場所に植えている場合には、株の様子を注意して見ながら水やりしてください。
忽滑谷 史記(ぬかりや ふみのり)
バラ育種家。埼玉県飯能市を拠点に、オリジナルブランド『Apple Roses』品種の育種・生産およびネットショップでの販売を行う。病気に強く誰でも簡単に育てられる、魅力的な品種づくりを目指している。
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