薔薇のすすめ

若手バラ育種家の
忽滑谷 史記(ぬかりや ふみのり)さんが
伝える、
見て、育てて楽しむバラのお話。

第十三話 「薔薇の苗・冬の大苗編」

2020.12.21

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「ロサ・ムルティフローラ」 Rosa multifloraの実

12月も下旬になりました。
この時期には夜間に霜が降りるようになり、秋から始まったバラの季節もそろそろ終わりになってきます。

第九話 「薔薇の苗・新苗編」で、春に出回る「新苗」についてご紹介しましたが、バラには、晩秋から出回る「大苗」と呼ばれる苗があります。
今回はこの「大苗」についてご紹介したいと思います。

大苗育成のため、畑に植え付けられた新苗(5月)

掘り上げる前の大苗(12月)

大苗は、第九話でご紹介した春の新苗を、畑に植え付けて、大きく育てた苗です。
半年間、畑でじっくりと育てることで、枝が太くなり、見栄えのする苗になります。
生育期にずっと手入れをしてきた苗なので、大きく育った姿を見ると感慨深いものがあります。

昨年までスコップを用いて1本1本苗を手で掘っていましたが、これが本当に大変な作業で、毎日疲れ果ててしまいます。
さすがに手作業に限界を感じて、今年から機械を導入しました。
スコップで掘るよりも、根を綺麗に掘ることができます。
私は農作業で汎用性の高い小型ユンボを選びましたが、バラの農家ではトラクターに掘り取り用のアタッチメントを付けて掘っている方が多いんじゃないかなと思います。

剪定と根の整理を終えた苗

掘り上げた苗は、乾かないように消毒した水に付けます。
そして、1本1本丁寧に枝を剪定し、根を整えます。

苗の植え付け

枝と根の整理を終えた苗を、直径18cmの6号ポットに丁寧に植えていきます。
用いる培養土は良質のものを用います。
質の悪い培養土には、泥などが混入されていることがあり、枯れてしまったり、生長を阻害してしまったりすることもあります。
培養土は、培養土屋さんに特別にお願いしているものだけを用いています。

植え付け後の水やり

開いたところです。
ここに品種の芽を入れていきます。

植え付け終わったら、水をたっぷりあたえています。
これで植え付けは終わりです。

このようにして大苗は出来上がります。
改めて見ると、生産は地道な作業の繰り返しですね。
気が遠くなりますが、1本1本、お客様に良い苗を良い状態でお届けできるように、丁寧に黙々と作業をしています。

冬の大苗は、次の春から開花する即戦力の苗です。
販売したては品ぞろえが多いので、好きなバラの品種を手に入れるチャンスです。
来年の春に花を楽しむために、ぜひ好みのバラの大苗を探して育ててみてください!

ちなみに、うちの畑は、空気の澄んだ冬には富士山が綺麗に見えます。
夕方に作業を終えて見る夕焼け空がとても好きです。
冬は晴れる日が多いのがいいですね。

忽滑谷 史記(ぬかりや ふみのり)

バラ育種家。埼玉県飯能市を拠点に、オリジナルブランド『Apple Roses』品種の育種・生産およびネットショップでの販売を行う。病気に強く誰でも簡単に育てられる、魅力的な品種づくりを目指している。