薔薇のすすめ

若手バラ育種家の
忽滑谷 史記(ぬかりや ふみのり)さんが
伝える、
見て、育てて楽しむバラのお話。

第十四話 「新品種」

2021.02.18

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私の新品種のバラ

寒さもいくらか和らぎ始めてきましたが、いかがお過ごしでしょうか?
寒い日が続くと気落ちも落ち込みがちになり、バラの咲く春が待ち遠しくなります。
読んで頂いた方の気持ちが少しでも高まるよう、新品種のバラを花の写真を多めに掲載しようと思います。

さて、バラの園芸品種の新商品は、たいていの場合、春と秋に発表されます。
春は「新苗」秋は「大苗」と呼ばれる規格の苗が販売されますので、その販売開始に合わせて行われることが多いためです。

今年もどんなバラが世の中に出てくるのか楽しみです。
今回はこの場をお借りして、私の新しいバラをご紹介させて頂けたらと思います。

 

■アルカーナ

「アルカーナ」Arcana
作出年:2021年│作出者:忽滑谷史記│作出国:日本
系統:フロリバンダ│咲き方:四季咲き│花径:中輪│香り:中香(ダマスク/フルーティー)

こちらのバラは『アルカーナ』という名前を付けました。
系統は中輪房咲きのフロリバンダです。
淡めのアプリコットピンク色で、季節によって色が変化します。
2014年に発表した「パウル・クレー」の改良種のため、花が少し似ています。

アルカーナ(左)とパウル・クレー(右)の秋の花色の比較

「パウル・クレー」はお客様にも耐病性に強いと仰って頂けるのですが、さすがに7年前に作ったバラですので、これからはもっと強い品種が求められてくるとは思っています。
また「パウル・クレー」は初期成長が遅いという点がありますので、その点も含めて改良しました。

最近はお庭で農薬も撒きにくくなりましたし、気軽にオーガニック栽培ができるようなバラを作るのは常々意識しながら育種を行っています。

一方で、花に魅力がないとバラである意味がないので、病気に強くて花も魅力的なバラの品種群を作り上げて行くのが私の役目だとはいつも思っています。
それは決して簡単なことではないですけどね。

『アルカーナ』は縦横1mくらいで、まとまりのよい樹形です。
「パウル・クレー」より一回り大きめに育つので、2品種並べて一緒に育てると、色の濃淡も含めてお庭で調和しやすいかと思います。
四季咲きでなので晩秋から初冬までどんどん花を咲かせてくれます。
香りは「パウル・クレー」と比較すると穏やかですが、優しくいい香りがします。
もっと強い香りを楽しみたい方は「パウル・クレー」を選択して頂くのもいいと思います。

ちなみに、『アルカーナ』とは、ラテン語で「神秘的」「謎」という意味です。
言葉の響きが花の雰囲気に合っていると思ったため決めました。

新作の『アルカーナ』おすすめのバラです。


■浮世

「浮世」Uki-Yo
作出年:2021年│作出者:忽滑谷史記│作出国:日本
系統:シュラブ│咲き方:四季咲き│花径:中輪│香り:強香(ダマスク/フルーティー)

こちらのバラは『浮世 (うきよ)』と名付けました。
浮世絵を眺めていて、思い付きました。
名前はここ数日前まで悩んでいましたが、思いきって日本語で命名することにします。

花弁の外側は色が淡くなり、アンティークの風味を感じる色合いの花。
カップ(球状)咲きで、ダマスクとフルーティーの香水のような、かなり強い香りを持つバラです。この香りはぜひ嗅いで頂きたいです。
花は四季咲きでシュラブ、木立樹形。縦横1メートル強ほどになる、まとまりのよい樹形です。
病気にも強いので育てやすいと思います。

『浮世』という言葉の、もともとの語源は「憂き世」。
平安時代から室町時代において、現世をつらいものと否定的に捉える、厭世的(えんせいてき)な概念でした。
それが江戸時代に入り、どうせ儚い世の中なら享楽的に楽しもうという肯定的なものへと変化していきました。
現代、定めなき世の中でも〈少しでも前向きに楽しんでいきたい〉という気持ちを込めて名付けました。

大変な状況の中ですが、自分が作ったバラで喜んで頂ける方がいらしたら、その方ために希望を与えることのできるようなバラを作れたら、と思います。

忽滑谷 史記(ぬかりや ふみのり)

バラ育種家。埼玉県飯能市を拠点に、オリジナルブランド『Apple Roses』品種の育種・生産およびネットショップでの販売を行う。病気に強く誰でも簡単に育てられる、魅力的な品種づくりを目指している。