薔薇のすすめ

東京・練馬にある「四季の香ローズガーデン」から、
季節とともに移ろうバラの様子や育て方のヒントをレポートします。

第九話 「薔薇の苗・新苗編」

2020.05.20

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「ロードライト・ガーネット」Rhodolite Garnet 作出年:2020年│作出者:忽滑谷史記│作出国:日本│系統:フロリバンダ│咲き方:四季咲き│花径:中輪│香り:強香

今年も、バラの季節を迎えました。
例年、5月のゴールデンウィーク明け頃から、温暖地ではバラが開花し始めます。
ここ数年は暖冬傾向が強く、ゴールデンウィーク前から咲き出すバラもちらほら見受けられます。

バラ園や、ご近所のお庭で咲いているバラを見ていて、きっと、自分でも育てたくなる方も多いのではないでしょうか?
そこで、今回はバラの苗にはどのようなものがあるのか、ご紹介したいと思います。

新苗と大苗

新苗

新苗(しんなえ)は前年に接ぎ木をしたばかりのまだ小さい苗で、比較的安価に入手できます。
直径12センチの4号鉢に植えられていることが多く、4月頃から出回ります。

大苗

新苗を1年間かけて大きく育てた苗を「大苗(おおなえ)」と呼びます。
直径18センチの6号鉢に植えられていることが多く、11月頃から出回ります。
開花時期の5月以降は、花付きで販売されることも多いです。

新苗の育て方


□植え替えをしましょう
新苗は、小さい4号鉢に植えられているため、購入後は早めに大きめの鉢に植え替えることをおすすめします。

□苗の扱い方
バラの苗は「接ぎ木」をして育てられています。
まだ赤ちゃん苗なので、接ぎ木してある所より上を持つと枝が折れてしまうことがあります。
せっかく買った苗が折れてしまったら大変なので、必ず下部の台木を持つようにします。

左は6号鉢、右は苗が植わっていた4号鉢

□鉢のサイズ
いきなり大きい鉢に植え替えると、用土が乾きにくく、苗が調子を崩す場合があります。
6号鉢(直径18センチ)~8号鉢(直径24センチ)くらいの鉢に植え替えるととをおすすめします。
根を崩すとショックを受けてしまうので、根鉢を崩さないようにそっと抜いてください

慣れている方でしたら、そのまま地植えしても大丈夫です。
ただ、6号鉢くらいでまずは株を育ててから地植えすると安心です。
鉢で育てている間、地植えする場所をじっくりと考えを巡らすのもいいと思います。

□土について
市販のバラ用の培養土を使うと簡単に植え付けられます。
ただ、安い培養土は泥などの生育に悪影響を与えるものが混ぜられている場合がありますので、信頼のできるメーカーのものを用いると安心です。

□植え付け
培養土は縁すれすれまでは入れません。
鉢のふちと、表土の間は少し開け、水やりの際に水を溜められるようにします。
この隙間を「ウォーター スペース」といいます。

植え付け後は、ウォータースペースにたっぷり水をあげてください。

□肥料
鉢植えの場合、肥料は1~2か月に一度与えることをおすすめします。
植え付け直後は根が傷んでいる可能性があるので、植え付け後1~2週間後から与えます。
化成肥料でしたら、ゆっくりと効く「IB肥料」などの緩効性化成肥料がおすすめです。
油粕などの有機肥料でも育てられますが、コバエやにおいが発生しますので、土の中に埋めることをおすすめします。

□摘芯(ピンチ)
新苗はまだ小さい苗ですので、できれば秋までは花を咲かせない方が早く大きくなりますし、その後の生育も良好になります。
新芽がある程度伸びたら、摘芯(ピンチ)を行います。
ハサミで切ってもいいですし、指で枝を折っても大丈夫です。

この時に蕾だけ取ると、どうしても背が高くなって、下から枝が出て来にくくなります。
葉っぱが3~4枚出て来たら、花枝の半分くらいを切るイメージで切ると樹形を作りやすいですよ。

でも、どうしても花を見たい場合には、1輪くらいは咲かせてもいいと思います。
植え替えた新苗が順調に育っている場合には、秋から花を咲かせても大丈夫です。

これで、新苗を購入後のお手入れは完成です。

新苗を育てる魅力は、価格の安さと、小さい苗から育てて生長過程を見守ることの喜びだと思います。

新苗は小さい苗ですので、バラの栽培初心者の方には難しいと思われがちです。
でも、冬の寒さで枯れることもないので、栽培のコツさえわかれば育てやすいですし、バラが大きくなっていく過程を理解しやすいので、おすすめです。

次回は、大苗の育て方をご紹介します。

忽滑谷 史記(ぬかりや ふみのり)

バラ育種家。埼玉県飯能市を拠点に、オリジナルブランド『Apple Roses』品種の育種・生産およびネットショップでの販売を行う。病気に強く誰でも簡単に育てられる、魅力的な品種づくりを目指している。