旬花百科

日本一の花市場、大田市場に集まる旬の花や最新品種をご紹介。
知っていると花選びが楽しくなるお話。

第十八話 「マム(菊)」

2021.02.03

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「ブラックナイト(デコラ咲き)」「マグナ(ポンポン咲き)」
「セイパウエル(ポンポン咲き)」

クラッシックでモダンな花

愛知県豊橋市は日本の電照菊*発祥の地であり、現在でも渥美半島周辺は菊の出荷が盛んな場所です。
今回はそんな菊の一大産地である愛知県で育てられた、進化を遂げているモダンなマム(西洋菊)をご紹介します。

「エポック(淡ピンク)」「プリティーリオ(濃ピンク)」

マム(菊)の基本情報

□出回り時期:通年
□香り:あり
□学名:Chrysanthemum
□分類:キク科キク属
□和名:菊
□英名:Chrysanthemum
□原産地:中国、日本

「マム」の語源
学名のChrysanthemum(クリサンセマム)から「マム」と呼ばれるようになりましたが、元々の語源はギリシャ語で「金の花」を意味しています。

「エポック」

マムの花言葉

「高貴」「高潔」「高尚」
「Cheerfulness(上機嫌、元気)」
「You’re a wonderful friend(あなたはとても素晴らしい友達)」

赤「あなたを愛しています」
白「誠実」
黄「長寿と幸福」

電照菊の温室

短日植物と電照菊

植物には昼の時間が長くなる頃に花をつける「長日植物」と夜の時間が長くなる頃に花をつける「短日植物」日の長さに関係なく花をつける「中性植物」がありますが、今回ご紹介している菊は短日植物の仲間です。

葉が暗闇の時間を感じとり、蕾を付ける仕組みを利用したのが「電照菊」です。
通常であれば夏至から冬至の日の短い期間にしか蕾を付けなかった菊を、光をコントロールすることで蕾を付けることができるようになり、一年中途切れることなく菊を咲かせることが可能になりました。

「プリティーリオ」

菊の種類

菊の切り花には大きく分けて4つの種類があります。

■輪菊(リンギク)
昔から主に仏花などで使用される白や黄色、紫などの大輪~中輪の菊。
■小菊
1本に小ぶりな花が何輪も付き、素朴で和の雰囲気がある。
■「スプレーマム」(スプレー菊)
小菊をヨーロッパで品種改良した小菊よりカラフルで大ぶりな品種。
■「マム」
スプレーマムと同じく主にヨーロッパで品種改良された品種。

専門用語で「ディスバッドマム」という名称もありますが、通常花屋ではこういった花を総称して「マム」と呼んでいます。マムは複数できた花芽を摘み、一輪に養分を集中させて大きく豪華な花に育てます。
この方法から前出の「ディスバッドマム」の名が付きました。ちなみに英語では”disbud mum”と表記し、disbudとは「(形を整えるために)芽を摘む」といった意味があります。

「エポック(デコラ咲き)」「セイオペラピンク(ポンポン咲き・淡ピンク)」
「ソウルス(ポンポン咲・複色ピンク)」

母の日の花

オーストラリアやニュージーランドも日本と同じように5月の第二日曜日が母の日にあたりますが「マム」が母の日の花として定着しています。
気候が日本と反対のオセアニアではマムが旬の時期であることや、「Mum(ママ)」の名が付いていることに由来するようです。


さまざまな花の形

マムには同じ花とは思えないほど、異なる咲き方の花があります。

■ピンポン咲き
丸くピンポン球のような咲き方をするタイプ。
ピンポン咲きタイプのマムはアレンジメントにも加えやすい花です。
また、写真のように色違いのピンポン咲きマムをブーケにすると、てまりのような和の雰囲気に。

「ソウルス(複色ピンク)」「すもも(複色オレンジ)」
「セイカーク(黄)」「セイロッサ(赤)」


■デコラ咲き
花弁(花びら)のサイズはさまざまで、大ぶりで華やかな印象の咲き方をするタイプ。

「エポック(ピンク)」「エポックアプリコット(オレンジ)」


■スパイダー咲き
細い花弁(花びら)が放射状に延びるタイプ。

「チスパ(オレンジ系・スパイダー咲き)」
「ブラックナイト(赤・デコラ咲き)」


「アンテナ(緑・デコラ咲き)」
「フィーリンググリーン(ポンポン咲き)」
「サルデナ(淡緑・デコラ咲き)」「ゼンブラライム(濃淡緑・デコラ咲き)」

今回はいままでの菊のイメージを覆すような、これが菊?と思うような品種をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
菊=仏花といった固定観念にとらわれず、こんなモダンなマムをぜひ楽しんでみてください。


花毎でご紹介しているマム(菊)のお話

水上多摩江さんが描いた菊の花
二十四節気の花絵 第六十六話 霜降の花絵「菊」

気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニック
二十四節気の花あしらい 第十七話 寒露の花あしらい「菊」

取材協力:株式会社 大田花き、渥美スプレーマム出荷連合、赤羽根洋花部会、ドリーム部会、輪菊部会