二十四節気の花絵

イラストレーターの
水上多摩江さんが花毎のために描いた、
二十四節気の花々です。

第六十六話 霜降の花絵「菊」

2020.10.23

life


2020年10月23日から二十四節気は「霜降(そうこう)」に

はやいもので秋最後の節気となりました。
江戸時代に書かれた二十四節気の解説書「暦便覧」の中で「つゆが陰気に結ばれて、霜となりて降りるゆへ也」と表されている時季です。

都内ではさすがに霜が降りるほどの冷え込みはまだありませんが、着実に冬に向かっている気配が感じられる今日このごろです。
植物の世界では野の草花が終わっていくのと入れ違いに木々の葉が一気に色づき、縦に長い列島ではこの時季、各地の紅葉の名所もそれぞれ表情を変えていきます。
北海道は落葉がはじまり、奥入瀬渓流や上高地がそろそろ見ごろに、といったように。

今年は気温が高く、例年より遅れ気味とのことですが、年々こうした傾向になりつつあり、紅葉しないまま落葉する木もちらほら見かけます。
葉が赤く色づくにはアントシアニンが多く作られる必要があり、これは昼温かく、夜は冷えるといった一日の中での寒暖差と太陽光(紫外線)が強く当たることが不可欠。
秋らしい日を感じることが少なくなると、美しい紅葉も見られなくなる……
季節のグラデーションは大きく変わる季節の準備期間として必要不可欠であることを、植物を通して思い知らされる出来事です。

「菊」

□開花期:9月~11月
□香り:あり
□学名:Chrysanthemum morifolium
□分類:キク科キク属
□和名:菊
□英名:Mum、Chrysanthemum
□原産地:中国、朝鮮半島

日本には国花として定められた花はありませんが、事実上の国花といえるのが菊と桜です。
切り花として国内生産量が最も多い花であり、一年中出回る菊ですが多くの品種が出そろうのは秋が深まってきた頃です。

菊は咲き方もさまざまありますが、今回水上さんが描かれたのはデコラ咲き、ポンポン咲き、アネモネ咲きといったタイプの花々。
現在ではまるでダリアのような姿をしたものなど、従来の菊のイメージを覆す品種が出てきていますが、もともとは奈良時代に大陸から渡ってきた野生種だったと言われています。
その後、今から約200年前に日本で菊の栽培が盛んになり、改良された花がヨーロッパに渡って更なる進化を遂げました。


花毎の花言葉・菊〈懐かしい未来〉

かつて野菊として到来したこの花は長い時をかけて親しまれ、異国を巡って新たな姿で日本に戻り、現在では多くの人がそのルーツを気づかないような華やかな姿形が生まれました。
でも、その香りや花弁の質感にはしっかりとルーツが宿っている──

そこで花毎の花言葉は〈懐かしい未来〉としました。
古いものこそ新しい。
温故知新ということわざがふさわしい、それが菊の花です。

文・花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子

水上多摩江

イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 琵琶湖の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など