二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第十七話 寒露の花あしらい「菊」

2022.10.08

life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。


2022年10月8日から二十四節気は寒露に

寒露とは、草木に冷たい露が降りる時期。朝晩はぐっと冷え込むようになりましたね。空気が澄んで、夜にはきれいに輝く月を楽しむことができます。

私の実家の近くでは10月になると神社で菊祭りが開催され、様々な形に仕立てられた色鮮やかな菊を祖母といっしょに楽しんだ思い出がよみがえります。お侍さんに仕立てられた菊人形が少しだけ怖かった記憶も今となっては素敵な秋の思い出です。

今日はそんな今が旬の日本を代表する花「菊」をいけてみようと思います。
和風なイメージの菊をスタイリッシュにいけて、ほんのり漂う季節の香りもお部屋の中に取り入れてみましょう。

ふんわりナチュラルに投げ入れる

今回は濃紺の花器に合わせてオレンジから黄色のグラデーションが美しい「オレンジエポック」という品種を選びました。前回紹介したダリアと見間違えてしまいそうな華やかな色合いをした、ゴージャスなフルダブル(八重)咲きの品種です。

さて、菊は日本の切り花出荷量のおよそ40%を占める、最も流通量の多い花。
昔はお仏壇やお供えイメージがあった菊ですが、今は華やかな品種も増えウェディングでも使われる花へと進化しています。扱いやすさや日持ちも抜群、見た目も素敵な菊は気軽に普段使いしていただきたい花のひとつです。

菊は長持ちするとはいえ、工夫次第でもっと長く美しく楽しむことができます。
水に浸かる余分な葉は手で取り除いて、茎は手で簡単に折ることができるので、ポキッと折ります。菊は金属を嫌うのでハサミやナイフは避けましょう。

いけるポイントは花瓶全体にふんわりいけること。といっても一本一本の距離を離しすぎると、間の抜けた印象になるのでほどほどに。
いけたい場所が決まったら、花の顔をくるくる回しながらきれいに見える角度を探って、全体の形も整えましょう。

秋の実りをプラスして深まる秋を表現

シンプルに菊の姿を楽しんだら、深まる秋を感じる花あしらいに。

加えたのはつややかに赤く色づいた実がかわいらしい「ガマズミ」。
枝ぶりを活かしてのびのびと、一方で菊は固めていけてコントラストを出しました。

この時期、花屋さんの店頭でもかわいらしい実物がついた枝ものが多く入荷しています。
季節限定のアイテムたちなので、ぜひチェックしてみてくださいね。

風にそよぐ秋草を加えてナチュラルに

今度はバスケットを合わせてより温かみのある花あしらいに。
花をいけた花瓶ごとバスケットに入れただけの簡単着せ替えです。すっぽり器が入るバスケットなどがあれば、お花を変えることなく手軽でがらりと印象が変わるのでおすすめです。

加えたのは猫じゃらしの別名でもおなじみの「エノコログサ」。
風にそよぐ姿はまるで秋の原っぱよう。季節の演出に一役買ってくれます。
どこからともなく生えてくるので、雑草扱いされるエノコログサですが、実は主役を引き立てる素敵な花材。この季節の花あしらいに加えてみてはいかがですか。

菊とエノコログサはあえて固めていけました。数か所に散らばせていけると、よりナチュラルなイメージに仕上がりますよ。

菊のコロンとしたフォルムを楽しむ

長いままの姿でしばらく楽しんだ後は、茎を少し短めにして秋色のアジサイに合わせコロンとかわいらしく。
茎が見える姿も美しいですが、アジサイといっしょにぎゅっと束ねたブーケのような花あしらいも素敵です。

菊の花全体が見えるように花を傾けると、花びらがより際立って菊の魅力がいっそう引き立ちます。
秋色に色付いたアジサイが、菊をより際立たせてくれますね。
この季節に使う器はガラスのようなクリアな素材よりも、今回のようなホーローや陶器の素材の方が季節感や温かみも感じることができておすすめです。

一輪挿しを並べてオブジェのように飾る

色ガラスのモダンな一輪挿しに短くなった菊をいけてみました。
茎を思い切り短くして花だけを見せても、または少しだけ茎を見せてすっきりさせても素敵です。

3本の花をいける場合は三角形を意識するとバランスがとりやすいですよ。
花瓶自体を前後にずらしたり、水平に並べたりしてもイメージが変わりますので、お気に入りの位置を見つけてみましょう。

最後の一輪も楽しむ

同時に数本の花を買っても同時に枯れるわけではないので、一度に捨ててしまわず、きれいな花を最後まで楽しみましょう。

秋色のアジサイと合わせた一輪挿しをゴールドのトレーに飾ってドレスアップしました。
敷物を変えると花も器も変わって見えるので、いろいろお試しくださいね。

香り高い花びらも楽しむ

菊は急に花びらがパラパラ落ちてしまうことがあります。
花びらだけになってもほんのり香るきれいな花びらを水に浮かべて楽しみましょう。

丸い水盤やお皿に水を張って花びらを浮かべれば、お月見にもぴったりの花あしらいに。
月を水面に映して、雅なお月見はいかがですか?
旬の菊で秋の夜長を楽しみましょう。

「菊」の基本情報

□出回り時期:通年(旬は9月~11月)
□香り:あり
□学名:Chrysanthemum morifolium
□分類:キク科キク属
□和名:菊
□英名:Chrysanthemum
□原産地:中国
□花言葉:高貴、高潔、高尚など


花毎でご紹介している菊(マム)のお話

マムにまつわるさまざまなお話
旬花百科 第十八話 「マム(菊)」

水上多摩江さんが描く花の絵
二十四節気の花絵 第六十六話 霜降の花絵「菊」

谷中直子

第一園芸入社前から学生バイトで働く生粋の第一園芸人。
百貨店系ショップでいわゆる花屋さんを数年経験後、ホテル店に移動しブライダル関係を十数年経験。店長職を経て本社勤務に。
現在は広報担当としてリリースなどの社外発信を担当。