vol.8 アマランサス──秋が深まる季節に色彩の余韻を
2025.10.23
暮life

週末に、ちいさな楽しみを。
「週末の一輪」は、日々の暮らしにそっとなじみながら、さりげない存在感を放つ季節の一輪を選び、異なる飾り方で少しずつ表情を変えながら、最後まで楽しみつくすための提案です。
月替わりで登場する第一園芸のデザイナーが、生け方の工夫や花との向き合い方をご紹介。
毎週木曜の夕方、週末の始まりに、暮らしにそっと花を添えるひとときをお届けします。
姿と色で感じる深まる秋
日ごとに秋が深まり、空気に静けさが漂いはじめる頃。
木々の葉が色づき、街の景色も少しずつ冬の気配を帯びてきます。
そんな季節の移ろいを、花の色で感じてみませんか?
今回は、揺れる穂のような姿が印象的な「アマランサス」と、ニュアンスカラーが美しい「ヒペリカム」を組み合わせた飾り方をご紹介します。

■ 主役の花材《アマランサス・ホットビスケット》
「アマランサス」は、インカ文明の時代から種子を穀物として食用にされてきた歴史を持つ植物。
現在では観賞用としても広く親しまれ、さまざまな品種が存在しています。
見た目は「ハゲイトウ」によく似ていますが、植物学的には異なる科に分類されます。
一般的なアマランサスは、長く垂れ下がる花穂が特徴ですが、「ホットビスケット」は小ぶりで、実りの季節の稲穂を思わせるような、素朴で温かみのある雰囲気が魅力です。
その穂の質感や色合いは、飾るだけで季節の気分をさりげなく演出できます。
「アマランサス」の基本情報
□出回り時期:7月~11月
□学名:Amaranthus
□分類:ヒユ科 ヒユ属
□別名:紐鶏頭(ひもげいとう)、仙人穀(せんにんこく)
□英名:Amaranthus、Tassel Flower
□原産地:中南米
□花言葉:粘り強さ、不老不死 など

■ 組み合わせる花材《ヒペリカム・ココジェラート》
「ヒペリカム・ココジェラート」は、くすみがかったニュアンスカラーの実が魅力の品種です。
ヒペリカムは一般的に赤やピンクの実が知られていますが、この品種は淡いベージュやグリーンが混ざったような、落ち着いた色合いが特徴。
実ものならではの質感と、控えめな色味がアマランサスの穂と調和し、秋らしい深みのある雰囲気を演出してくれます。

■ 花器について
前回のvol.6で使用した、飴色のガラス花器を今回も選びました。
オレンジ〜ベージュの温かみのある花色と、ガラスの色味がよくなじみ、グラデーションでまとめると美しく調和します。

■ 生け方のコツ
まず、アマランサスとヒペリカム、どちらも水の吸い上げをよくするため、茎は斜めにカットします。
生け方はとても簡単です。花器の約3倍の長さにカットしたアマランサスと、約2倍にカットしたヒペリカムを交差するように生けましょう。
交差させることで、それぞれの花が狙った位置に固定されやすくなります。

色合わせを楽しむ
週の前半は全体のシルエットを楽しんだら、後半は穂と実にフォーカスをあてましょう。

■ 花器を替えて、もうひとつの楽しみ方
週の後半はたくさんの色が入ったガラスの花器を使って賑やかに。
カラフルな花器は難しそうに思えますが、色数が多い分、花の色とリンクしやすいので、意外にもさまざまな花と合わせやすいものです。
また、口が細く、下が広がっているので、安定感があり、花が狙った位置に留まりやすい形です。


アマランサスとヒペリカムの葉は生け換えるタイミングで、傷んでいるものや、大きな葉を落とします。こうすることで、水揚げもよくなる上に、アマランサスの穂と、ヒペリカムの実に視線が集まります。

お手入れと長持ちのコツ
アマランサスとヒペリカムは葉が傷みやすいため、生ける前に傷んだ葉を取り除いておきましょう。
茎をカットする際は、よく切れるハサミで斜めに切ると、水を吸い上げる断面が広がり、水揚げがよくなります。
枝ものには太い茎も切りやすい専用のハサミを、草花には切り口がつぶれにくい細身のハサミを使うのがおすすめです。
また、口の細い花器には、口の細いジョウロを使うと水を注ぎやすく便利です。

10月の担当:久米井 夏実(第一園芸 フローリスト)
「今回は、秋の終わりに向かう静かな空気の中で、穂の揺れや実の色合いが印象的な花材を選びました。
アマランサスの素朴な質感と、ヒペリカムのニュアンスカラーが織りなす組み合わせは、控えめながらも季節の深まりを感じさせてくれます。
それぞれの花材が持つ個性を活かしながら、週末の空間に、静かに深まる秋の気配を添えてみてください」
花毎でご紹介しているアマランサスに関するお話
・夢の花屋 第二十九話 動植綵絵の群鶏図に見立てる

第一園芸 日本橋店
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電話番号 03-6696-8730
営業時間 11:00~19:00
アクセス 日本橋駅 約300m(徒歩約4分)/八重洲地下街出口 約40m(徒歩約1分)
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Text・Photo 第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子
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