二十四節気の花絵

イラストレーターの水上多摩江さんが描いた季節の花に合わせた、
二十四節気のお話と花毎だけの花言葉。

第百六話 小暑の花絵「カスミソウ」

2023.07.07

life

 

2023年7月7日から二十四節気は「小暑(しょうしょ)」に

本格的な暑さになる手前を表した節気です。
そして、本州では処暑の節気の内におおむね梅雨が明けるころ。
暑中見舞いを出すのもこの小暑からで、「暑」の字が付く次の大暑までがその期間にあたります。

小暑の行事「七夕」
七月七日にあたる七夕(たなばた)は、三月三日の桃の節句や五月五日の端午の節句などと同じ五節句の一つで、笹竹の節句とも呼ばれる日です。

竹や笹に願い事を書いた短冊を結ぶ風景は夏のはじまりを告げる風物詩ですが、かつては願い事を書いた梶の葉を、水を張ったタライに浮かべて天に届くよう願っていました。
広田千悦子さんが執筆されている「花月暦」でも梶の葉を水盤に立てた、静謐なしつらいをご紹介いただいています。


「カスミソウ」

□出回り時期(切り花):通年
□香り:あり
□学名:Gypsophila
□分類:ナデシコ科 カスミソウ属(ギプソフィラ属)
□和名:霞草、小米撫子(こごめなでしこ)、群撫子(むれなでしこ)など
□英名:Baby’s breath、Gypsophila
□原産地:ヨーロッパ、アジア

カスミソウはヨーロッパからアジアの幅広い地域にかけて約100~120種の仲間があるとされている植物です。
一年草、二年草、多年草(宿根草)があり、茎が横に這うように伸びるほふく性のものから、高さ120cm程度になるものがあります。

学名でも英名でもあるGypsophila(ギプソフィラ)はギリシア語のGypsos=石膏と、philos=愛するに由来し、この属の一部の種が石灰質の岩上に生えることにちなんでいます。

現在、切り花としてよく出回っているカスミソウは、何年も生育と開花を繰り返す「宿根(しゅっこん)カスミソウ」で、和名は小米撫子と呼ばれるものです。
一方、ガーデニングで主流のカスミソウは草丈が低く、一年で生育と開花のサイクルを終える「一年草」タイプです。和名では群撫子と呼ばれています。

ベイビーズブレス
宿根カスミソウは英語圏で「Baby’s breath」とも呼ばれる花です。
この名の由来には諸説ありますが、小さな房状のふわふわした形が、赤ちゃんの息のように見えるからという説がもっと有名です。他にも花の香りが赤ちゃんのミルクの香りに似ている、小さく繊細な花であることから出産祝いの花として使われたことに由来するなどさまざまな説があります。

7月7日はカスミソウの日
小さな花が集まって咲くカスミソウが夜空に架かる天の川のように見えることから、7月7日の七夕がカスミソウの日になりました。
切り花の品種にも「アルタイル」「銀河」「ポラリス」「コスミック」といった天体にちなむ名前が多くあり、カスミソウは星に結び付けられることの多い花です。


花毎の花言葉・カスミソウ「願いが叶う」

一般的なカスミソウの花言葉は「無邪気」「清らかな心」「幸福」などです。
どれも別名であるベイビーズブレスにちなんで付けられたと思われる、やさしげな花言葉です。
そこで、今回は新たな花言葉として、カスミソウが持つ星のイメージにちなんだ花言葉を考えました。

星は古来より航海や占いなど、さまざまな場面で道しるべとして重要な役割を持っていました。普遍的な存在でありながらも、未知でもある星への思いから生まれたのが七夕の伝説であり、流れ星に願いごとをするといった言い伝えなのでしょう。
そうした星に願いを託した古来からの言い伝えにちなんで、カスミソウには「願いが叶う」という花言葉を贈りたいと思います。


文・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子

水上多摩江

イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など