二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第十話 春分の花あしらい「ミモザ」

2022.03.21

life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきましたが、この「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして、最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。


2022年3月21日から二十四節気は春分に

春分の日は昼と夜がほぼ同じ長さになる日。自然をたたえ、生物をいつくしむ日として祝日にもなっている、二十四節気の中でも特別な節気です。たくさんの出会いや別れ、新しい生活の始まりとなど変化が多いのもこの時期ですね。

柔らかく温かい春の日差しをたっぷり浴びて、我が家のベランダでもたくさんの花が咲きだしました。桜のつぼみもふくらみだして本格的な春の訪れを感じます。

今回は春を感じる花「ミモザ」をいけてみようと思います。
春の太陽のような優しくてまぶしい黄色のミモザをいけて、お部屋の中に春を取り入れてみましょう。

枝ぶりをいかして、ざっくりいける

ミモザは大きな木から切り出した「枝もの」と呼ばれる種類の花。
左右に曲がった個性的な枝ぶりをいかして、のびのびといけてみましょう。
まんべんなく花がついているようでも、よく見ると枝の向きが素敵、花がかわいい、と感じるポイントがあります。じっくり枝全体を観察してみましょう。

素敵な向きがよくわからなくても大丈夫。花瓶にいけてから枝をくるくる回してみましょう。たわわについた花や細かい葉がクッションになって「いいかも!」と思う場所で簡単に留めることができますよ。

もったいないですが、水に付いてしまう場所の花や葉は落とします。落とした花もかわいいので、小さな花あしらいやガーランドなどに使ってみてくださいね。(のちほどご紹介します)

ミモザは乾燥に弱いので、購入したらなるべく早く水にいけてあげましょう。霧吹きがあれば、いけた後、枝全体にスプレーしてあげてください。湿度も補ってあげると花も長持ちします。
それでもカリっとなってしまったら、色がきれいなうちにドライフラワーにしてみましょう。鮮やかな色が長続きします。

今回、ミモザの品種はポピュラーな「銀葉アカシア」をチョイスしています。最近は色々な種類のミモザがお花屋さんに並びますので、花や葉の違いを楽しんでみてくださいね。

 

 

桜をプラスして春らしさをもっと楽しむ

ミモザと桜を合わせれば、春の気分がさらに盛り上がります。
黄色のミモザとピンクの桜。ふわふわしたパステルカラーは幸せな気分にさせてくれますよね。

今回ミモザに合わせたのは、大輪で一般的な桜より濃いピンク色の「河津桜(かわずざくら)」とオレンジのリップがかわいらしい「黄房水仙(きぶさすいせん)」です。

ミモザがクッションになって桜や水仙を支えてくれるので、好きな形にデザインできますよ。
おうちでお花見気分を楽しめる、春におすすめの組合せです。

 

色を足して変化を楽しむ

ミモザに元気がなくなってきたら、傷んだ花や葉をお手入れしつつ、色をプラスして変化を楽しみましょう。ミモザの黄色に対して反対色のブルー系の花をあしらうと、コントラストができてぐっと引き締まった印象に。

プラスしたのは淡い紫が儚げな「リューココリネ」とブルーのポンポン状の花がかわいらしい「ギリア」。

ミモザは主役にも、脇役にもなる便利な花です。
色々な花と組合せて、春しか味わえないミモザを楽しみましょう。

 

高さを変えて飾る

高さの違う器にあしらうと、たっぷり飾った時とは違う印象が楽しめます。
こちらの飾り方だとミモザはほんの少しの量でも、見た目のボリュームが出せるのでおススメです。

過ごす場所や気分に合わせて、ひとつずつ玄関やテレワークのデスクに飾ったり、ふたつ一緒にリビングに飾ってゆったりお茶をしたりと、生活のシーンに合わせて花飾りを楽しんでみましょう。

 

マグカップで花を最後まで楽しむ

お手入れをして短くなってきたり、折れてしまった花も捨てずにマグカップに入れて楽しみましょう。
かわいいミモザは器を選びません!
身近な食器も素敵な花器にかわります。いろいろな器でこの季節だけの花を楽しんでみてくださいね。

 

ドライフラワーで楽しむ

ドライフラワーにしてもミモザの鮮やかな色は色あせにくく、素敵に仕上がります。鮮やかな色を楽しみたい時は、花や葉がきれいなうちに逆さにつるして乾燥させましょう。
写真のドライフラワーはパールアカシア(真珠葉アカシア)です。ギンヨウアカシアより葉が大きいので散りにくく、ドライフラワーにも向いています。

ミモザのドライフラワーは花瓶にいけても、そのままスワッグのように壁にかけて、オブジェのようにしても素敵です。
水が要らないので場所を選ばず飾れます。電気まわりや猫などのペットがいても安心ですね。

 

お手入れで取りのぞいた花も楽しむ

お手入れでどうしても取り除かなくてはいけない花や葉は、紐やワイヤーにくくってガーランドにして楽しみましょう。
捨てられるはずだった花で素敵なインテリアが出来上がりますよ。

ゆらゆらと春の風に揺れる春色のガーランド。
軽いので、壁にピンでさしたり、カーテンレールに下げたり、自由にお楽しみいただけると思います。

 

花屋とのコミュニケーション

長い枝で販売されていることも多いミモザ。
どこで切ったらいいかわからない…そんな時は花屋さんに相談してみましょう。
花瓶の大きさを伝えれば、花が無駄にならない場所でカットしてもらえますよ。

魚屋さんで一匹の魚を切り身にさばいてくれるように、花屋でも大きな枝もの 1 本をお好みのサイズに切り分けるサービスがあります。花屋さんに気軽に要望を伝えてみましょう。
きっと喜んで対応してくれるはずです!

花を買うだけでなく、花屋さんとのコミュニケーションも楽しんでいただければ、花屋としてはうれしいかぎりです。
ぜひ、春の花いっぱいの店頭にお気軽に遊びに来てくださいね。

 

「ミモザ」の基本情報

□出回り時期:12月~3月
□開花時期:3月~4月
□香り:微香
□学名:Acacia baileyana
□分類::マメ科 アカシア属
□和名:ギンヨウアカシア
□英名:mimosa
□原産地:オーストラリア
※一般的なミモザ「ギンヨウアカシア」の情報です


花毎でご紹介しているミモザのお話

水上多摩江さんが描く花の絵
二十四節気の花絵 第七十五話 啓蟄の花絵「ミモザ」

谷中直子

第一園芸入社前から学生バイトで働く生粋の第一園芸人。
百貨店系ショップでいわゆる花屋さんを数年経験後、ホテル店に移動しブライダル関係を十数年経験。店長職を経て本社勤務に。
現在は広報担当としてリリースなどの社外発信を担当。