二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第十一話 穀雨の花あしらい「ビバーナム」

2022.04.20

life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。


2022年4月20日から二十四節気は穀雨に

穀雨(こくう)とは、読んで字のごとく穀物の成長を促す雨が降るころ。
春最後の節気です。
穏やかな雨に大地は潤い、鮮やかな緑の新芽はすくすくと成長していきます。

私の実家は田園地帯で田んぼが多くありました。穀雨の頃は農家の皆さんが田植えの準備で忙しそうだったことを覚えています。
この季節になると風にそよぐ、芽吹いたばかりの美しい緑の苗代の風景が懐かしくなります。

今日は雨上がりのみずみずしい新緑のような、フレッシュなビバーナムをいけてみようと思います。お部屋の中に夏のはじまりの予感を取り入れてみましょう。

 

無造作に、ふんわりいける

前回紹介したミモザ同様、ビバーナムも木から切り出した「枝もの」と呼ばれる種類の花。

ボリュームのある花と木質感のある枝の対比の美しさがわかる、ガラスの器がおすすめです。
花が重いのでうつむいた感じになりますが、その様子も素敵です。花と花がぶつかりつぶれないように、ふんわりいけてみましょう。

このぐらいの本数であれば、四方にまんべんなくいけるよりも、少し傾けてまとめ気味にいけるほうがすっきりまとまりますし、全体がスタイリッシュなフォルムになるのでぜひお試しくださいね。

ひと昔前のビバーナムは輸入品がほとんどで、日持ちもいま一つでしたが、最近はとても丈夫で日持ちするものが多くなりました。
どの花でも同じですが、お花屋さんから購入したら必ず切り戻しを行って切り口を新しくしましょう。
切り口周辺の樹皮を削ると、日持ちがよくなるのでチャレンジできる方はお試しくださいね。
また枝が太い場合は切り口に十文字の切り込みを入れると切り口からより水が上がり、ますます日持ちも良くなります。

咲き始めの鮮やかなライムグリーンが咲き進むと白へと変化するので、時間による花色の変化も楽しめると思います。

最近はビバーナムの種類も多く出回るようになりました。今回はポピュラーな「ビバーナム・スノーボール」をチョイスしています。姿は全く違いますが、花も実も楽しめる「ビバーナム・ティヌス」、真っ赤な実が美しい「ビバーナム・コンパクタ」など、季節やお好みに合わせてさまざまなビバーナムを楽しんでみてくださいね。

 

小花をプラスして季節の勢いを表現

ビバーナムだけのアレンジに、のびのびと育つ季節の小花を加えて、春から夏へ進む季節の変化をイメージしてみました。

今回合わせたのは、大きなシロツメ草のような「トリフォリウム・クリスタルキャンドル」と、繊細で弾むような黄色の小花がかわいらしい「メラスフェルラ」、穀雨を表現すべく「麦」をプラスしました。

ふわふわのビバーナムがクッションになって小花たちを支えてくれるので、好きな形にデザインできます。ナチュラルでフレッシュな色や質感の組み合わせは、気持ちも体もリフレッシュさせてくれるはず。
私はテレワークのデスクから見えるところに置いて、まるで森林浴のような癒しの時間を感じることができました。

 

器を着せ替えて変化を楽しむ

こちらは花をいけた花瓶ごとバスケットに入れただけの簡単着せ替え。すっぽり器が入るバスケットなどがあれば、お花を変えることなく手軽でがらりと印象が変わるのでおすすめです。

こうしたバスケット以外でも、ランドリーバスケットやキッチンバスケット、エコバックなども花瓶のカバーにすると楽しいアレンジが楽しめます。

ビバーナムの明るいグリーンはどんな器でも合わせやすいので、インテリアや気分に合わせてコーディネートを楽しみましょう。

 

一輪挿しで気軽に

ビバーナムが一本あったら、切り分けて一輪挿しで楽しむのもおススメです。

また、時間がたって少し元気がなくなった枝も、短くすることで水あげがよくなり、息を吹き返したように元気になります。短くカットすることで日持ちも良くなりますし、コンパクトなので飾る場所も選びません。
過ごす場所や気分に合わせて、玄関やテレワークのデスクに別々に飾ったり、ふたつ一緒にリビングに飾ってゆったりお茶をしたりと、生活のシーンに合わせて花飾りを楽しんでみましょう。

 

グラスに浮かべて花を最後まで楽しむ

お手入れとともに短くなる、水があがりづらく元気がない、折れた…といった花も捨てずにお手持ちのグラスに入れて楽しみましょう。身近な食器も素敵な花器にかわります。

この時、水も素材のひとつです。花と器と水、どれもが美しく見えるように組み合わせれば、涼やかなアレンジメントのできあがり。
いろいろな器でこの季節だけの花を楽しんでみてくださいね。

 

贈りもののカタチ

きれいにラッピングされた花もギフトらしくて素敵ですが、海外の映像でときどき見かける、むき出しのブーケをもって颯爽と歩く姿は、持ち歩いている時もブーケ本来の美しさを楽しんでいるようで憧れます。

今の日本では少しハードルは高いですが、限りある資源を守るためにもラッピングなしの「見せるギフト」もアリではないでしょうか?
状況に応じてラッピングのあり、なしといった選択肢が増えるとしたら素敵な事だと思います。
ホームパーティーのお呼ばれなど、親しい方へのギフトにもぴったり。さっと飾れて環境にもやさしい、サスティナブルなブーケを選んでみてはいかがでしょうか。

 

「ビバーナム」の基本情報

□出回り時期:2月~5月(国産)
□開花時期:4月~5月
□香り:なし
□学名:Viburnum opulus
□分類::レンプクソウ科 ガマズミ属(スイカズラ科で分類される場合もあります)
□和名:西洋肝木(セイヨウカンボク)
□英名:Snowball
□原産地:ヨーロッパ、北アフリカ等
※一般的なビバーナム「スノーボール」の情報です

谷中直子

第一園芸入社前から学生バイトで働く生粋の第一園芸人。
百貨店系ショップでいわゆる花屋さんを数年経験後、ホテル店に移動しブライダル関係を十数年経験。店長職を経て本社勤務に。
現在は広報担当としてリリースなどの社外発信を担当。