二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第三十四話 春分の花あしらい「桜色のチューリップ」

2024.03.20

life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。


2024年3月20日から二十四節気は春分に

春分とは昼と夜の長さがほぼ同じになる日。
「春分の日」として祝日にもなっている二十四節気の中でも特別な節気です。

そんな春分に選んだ花は「桜色のチューリップ」
今年の桜の開花予測は奇しくも春分の日(でしたが寒の戻りでもう少し先になりそうですね)。
桜色のチューリップを部屋に飾って、青空の下の桜とともに春の風物詩を楽しみましょう。

みずみずしい花姿を楽しむ

チューリップはかわいらしい花だけでなく、すらりと伸びた茎、そしてシャープな葉のバランスが絶妙。
誰がどういけてもきまる花だと思います。
そんなチューリップは作り込みすぎず、ざっくり花瓶にいけるだけでも素敵に見えます。

新鮮なチューリップが手に入ったら、ぜひ透明なガラスの花瓶にいけてみてください。きらきらした水とともに、みずみずしいチューリップ全体の姿を楽しむことができますよ。

今回選んだ品種はこの季節にぴったりな桜色のチューリップ。一重でスリムな咲き方の「ガブリエラ」と、八重咲の「ドリーマー」です。

花瓶にいけた時は「きまった!」と思っても、翌日には真上に伸びてしまって、形がまるでかわってしまう気まぐれな姿もチューリップの魅力です。
茎もだんだん伸びていくので、水替えのタイミングで茎の下をカットしましょう。
花びらも昼に開いて夜に閉じるといった、かわいらしい変化を見せてくれますよ。

人間がコントロールできない、動きのある生き生きした性質ごと楽しんでみてくださいね。

すらりとした姿をいかしてナチュラルにいける

今度は本数を減らしてコンパクトにいけてみました。
このぐらいの本数をいけるなら、手で束ねてからまとめて花瓶に入れるほうが、簡単でバランスが取りやすいと思います。

チューリップはいけてから時間がたってくると、茎も伸びて葉もだらりと元気がなくなってきます。
そんな時はこのようにある程度高さのある器を選んで、チューリップを支えてあげましょう。

春の花をプラスして季節の賑わいを表現

桜が咲き本格的な春がやってきた!そんな季節の賑わいを、春の花をプラスして表現してみました。

最初の1枚はチューリップ10本のみでシンプルに仕上げたものです。
次はチューリップを6本に減らして、小さな白い花を枝いっぱいに咲かせる「コデマリ」をプラスしました。
最後は春爛漫を表現した1枚。藤の花を逆さまにしたような「ルピナス」、ラッパ型の花「キルタンサス」、小さな桜の花のような「シレネ サクラコマチ」、グリーンの小花「タラスピ(ぺんぺん草)」を加えて季節の賑わいを表現しました。

チューリップの茎や葉は、キュキュッとした質感が滑り止めのようになるので、花瓶の中である程度花を固定することができます。そのため、ある程度狙ったところに花を配置できるので、たくさんの花をいける時でも意外にうまくいくと思います。
いけ終わったら少し離れたところからバランスを見て微調整することを忘れずに。

春を感じる桜色の花あしらいのできあがりです。

楽しげな春の雰囲気を表現

チューリップがおしゃべりしているような、楽しげな様子を表現してみました。

チューリップの美しさを楽しむには一輪で楽しむこともおすすめです。高さが違うガラスの花瓶に一輪ずついけてバランスを見て配置します。三角形を意識すると美しく仕上げることができますよ。
葉も花の美しさを引き立てる大切なアイテムなので、全部取ってしまったりせずに効果的に使いましょう。

身近なモノを花器に見立てる

お気に入りのブリキのジョーロと洋書にチューリップをいけてみました。

ジョーロにも洋書にも小瓶を仕込んで器にしています。
チューリップは先ほど紹介したジャグなど、カジュアルな道具との相性がとても良いと思います。

自由な発想で、家にある身近な道具を花器に見立てて楽しみましょう。

一輪挿しをトレーでおめかし

ガラスの小瓶に入れたチューリップをトレーに載せてドレスアップしてみました。

トレーにまとめて飾るだけで、少しだけおめかしした花あしらいになります。
人が集まるタイミングはこのようにまとめて、仕事をするときや寝室には好きな一輪で楽しむ。
そんなフレキシブルな楽しみ方をぜひお試しくださいね。

水中花のような儚いイメージを表現

チューリップ全体が入るようなサイズの花器に入れて、まるで水中花のようにしてみました。

水中花をイメージしても水は少な目で!チューリップは3分目ぐらいの少な目の水で管理したほうが花の持ちが良いです。ただし、どんどん水を吸ってあっという間に水がなくなってしまうので、水切れに注意しましょう。

まるで床の間の一輪のように

今回、最も緊張感をもっていけた花あしらいです(笑)

一輪挿しにいける時は花選びから慎重になります。お花屋さんでお気に入りの1本を選ぶ時も、花のきれいさはもちろん、葉の付き方にも気を付けて選び、気持ちを込めていければ、まるで床の間にいけるような緊張感をもった凛とした一輪挿しになるでしょう。

そうして気持ちを込めた一輪も、翌日にはすっかり姿を変えてしまっています。
でも、それがチューリップです(笑)毎日の変化も楽しみましょう!

大切に一輪を楽しんで

短くカットしたチューリップにカールした葉を添えていけてみました。お手入れして短くなったり、折れてしまったりしたチューリップにもおすすめです。
最後まで、チューリップを楽しみましょう!

「チューリップ」の基本情報

□出回り時期:11月~4月
□開花時期:3月~5月
□香り:あり
□学名:Tulipa
□分類:ユリ科チューリップ属
□和名:鬱金香(ウコンコウ/ウッコンコウ)
□英名:Tulip
□原産地:地中海沿岸から中央アジア
□花言葉:「博愛」「思いやり」など


花毎でご紹介しているチューリップのお話

チューリップにまつわるお話とさまざまな品種
旬花百科 第二十六話 「ユニークなチューリップ2」

第一園芸のトップデザイナーが見立てた花
夢の花屋 第三話 「キューケンホフのチューリップガーデンに見立てる」

水上多摩江さんが描く季節の花と二十四節気のお話
第五十一話 啓蟄の花絵「チューリップ」

谷中直子

第一園芸入社前から学生バイトで働く生粋の第一園芸人。百貨店系ショップでいわゆる花屋さんを数年経験後、ホテル店に移動しブライダル関係を十数年経験。店長職を経て本社勤務に。現在は広報としてリリースなどの社外発信を担当。