第六十六話 寒露の花あしらい「コスモス」
2026.10.08
暮life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを、第一園芸のトップデザイナー・新井光史がご紹介します。
2026年10月8日から二十四節気は寒露に
寒露とは、朝晩の冷え込みが進む時季、野山の草花に宿る露を表した節気です。
秋が深まるにつれて、野山ではさまざまな草花が見頃を迎えます。
「秋桜」とも書くコスモスも、この時季を象徴する花のひとつです。
コスモスの原産地はメキシコ。18世紀末にヨーロッパへ渡り、その後世界各地で親しまれるようになりました。日本へは明治時代に伝わり、風に揺れる可憐な花姿から秋を象徴する花として広く愛されています。
名前の由来はギリシア語の「Kosmos(秩序・調和・美しいもの)」。整然と並ぶ花びらの姿にちなんで名付けられたといわれています。
可憐な花姿の中にも凛とした美しさを持つコスモス。そんなコスモスを使った花あしらいをご紹介します。

ゆらぐ姿の魅力
コスモスは、ごく細い茎と糸のような葉を持ち、風にそよぐようなやわらかな姿が特徴です。一輪ごとに表情が異なり、それぞれに個性が感じられます。
そこで、一本の姿を活かして花を生けました。
ここでは、真鍮の小ぶりな花器に「ハイブリッドスターチス」を口元に詰めて、花留めにしました。そこに長めのコスモスを挿しています。
心惹かれる一本の美しさをじっくり楽しむ花あしらいです。

野に咲くように
ピンクの濃淡が美しいコスモスに、「パープルファウンテングラス」をあわせました。うっすらと紫がかった穂が花色と繊細なシルエットを引き立てます。
土台は油粘土を薄く切ったものに、水を入れた試験管を挿しました。
ドライフラワーとしても楽しめるパープルファウンテングラスは、水揚げの必要がないため粘土に直接挿しています。

自在な形にできる粘土の特性を活かして、花材を傾けて生けました。
試験管は限られたスペースでも使いやすく、工夫次第でさまざまに活用できるため、フローリストにとって便利な道具のひとつです。
そのままだと自立しないので、ワイヤーを使って固定することが多いものですが、より簡単に自由に動かせるものとして、粘土を取り入れたのは新井によるアイデアです。

黄花コスモス
軽やかな黄色やオレンジの花が印象的なのが「黄花コスモス(キバナコスモス)」。
コスモスと名が付いていますが、一般的なピンクや白のコスモスとは異なる種です。同じコスモス属の仲間であることから、ここではコスモスの一種としてご紹介します。
秋らしい色合いに合わせ、小さな銅の花器に自然な表情で生けました。
鮮やかな花を際立たせるため、葉や茎は控えめに見せています。
コスモスはきっちりと生けるよりも、花があちこちを向いているような姿を活かすと、魅力が引き立ちます。

こちらでは、銅のボウルに花を浮かべています。
落ち着いた銅の輝きと合わさり、満月を思わせる趣が生まれます。
お手入れの途中で短くなった花や、一輪だけ残った花も、水に浮かべれば最後まで美しく楽しめます。

コスモスを華やかに
ここからは、新井光史によるフローリストならではのアレンジメントをご紹介します。花材を加えながら変化していく様子を順を追ってご覧ください。
まずは白いコスモスを横長の花器に生けます。

続いて、濃いピンクのコスモスを加えます。

黄花コスモスと白いハイブリッドスターチスを添えます。

最後に、くすみピンクのハイブリッドスターチスを全体に散らすように添えます。
花の間に風が通り抜けるような余白を作ることで、コスモスならではの軽やかな表情が引き立ちます。
また、組み合わせたハイブリッドスターチスは、くすんだ色合いと細かな花々がコスモスをやさしく引き立てます。
秋を代表する花のひとつであるコスモス。やわらかく揺れる姿を眺めながら、季節の彩りを暮らしに取り入れてみてはいかがでしょうか。

「コスモス」の基本情報
□出回り時期:6~11月
□香り:なし
□学名:Cosmos bipinnatus
□分類:キク科 コスモス属
□別名:秋桜(あきざくら)
□英名:Cosmos
□原産地:メキシコ
□花ことば:乙女の真心、調和
「黄花コスモス」の基本情報
□出回り時期:7~10月
□香り:なし
□学名:Cosmos sulphureus
□分類:キク科 コスモス属
□別名:キバナアキザクラ
□英名:Sulphur Cosmos
□原産地:メキシコ
□花ことば:野性的な美しさ、自然美
花毎でご紹介しているコスモスのお話
・二十四節気の花あしらい 第四話 秋分の花あしらい「コスモス」
・二十四節気の花絵 六十四話 秋分の花絵「チョコレートコスモス」
・二十四節気の花絵 第十六話 秋分「コスモス」

新井光史
神戸生まれ。花の生産者としてブラジルへ移住。その後、サンパウロの花屋で働いた経験から、花で表現することの喜びに目覚める。 2008年ジャパンカップ・フラワーデザイン競技会にて優勝、内閣総理大臣賞を受賞し日本一に輝く。2020年Flower Art Awardに保屋松千亜紀(第一園芸)とペアで出場しグランプリを獲得、フランス「アート・フローラル国際コンクール」日本代表となる。2022年FLOWERARTIST EXTENSIONで村上功悦(第一園芸)とペアで出場しグランプリ獲得。2025年3月に行われたFlower Art Award2025でも川口太聞(第一園芸)とペアで出場しグランプリを獲得した。 コンペティションのみならず、ウェディングやパーティ装飾、オーダーメイドアレンジメントのご依頼や各種イベントに招致される機会も多く、国内外におけるデモンストレーションやワークショップなど、日本を代表するフラワーデザイナーの一人として、幅広く活動している。 著書に『The Eternal Flower』(StichtingKunstboek)、『花の辞典』『花の本』(雷鳥社)『季節の言葉を表現するフラワーデザイン』(誠文堂新光社)などがある。
Text・Photo 第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子
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