二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第六十七話 立冬の花あしらい「バラ」

2026.11.07

暮life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを、第一園芸のデザイナー・志村紀子がご紹介します。


2026年11月7日から二十四節気は立冬に

冬の始まりを告げる節気が、立冬(りっとう)です。
二十四節気では四季それぞれの始まりに「立」の字が付き、季節の訪れをひと足早く知らせてくれます。そのため立冬も、暦の上では冬の始まりを意味しますが、実際には秋の名残を感じるころ。秋と冬がゆるやかに移り変わる時季です。

そんな季節の狭間に楽しみたい花が「バラ」。
花屋では一年中目にする花ですが、春に次いで秋もまた旬を迎えます。秋のバラは、同じ品種でも花色が深まるなど、この時季ならではの表情が魅力です。

今回は、温かみのあるローズピンクのバラや、この時季だけに出回るローズヒップを加えた花あしらいをご紹介します。

一輪の美しさ

たくさんのバラを集めた花あしらいも魅力的ですが、一輪でもその美しさが際立つのが、花の女王とも呼ばれるバラならではの魅力です。

ここでは、茶系のバラの名花として一世を風靡した「ブラックティ」を、茶色のガラス花器に一輪あしらいました。
茎に対して花器の口径が広いので、長さを調節した際に余った茎で固定しています。花留めは隠して使うこともありますが、アクセントになるように工夫しても。
また、花器のサイズを花の大きさに合わせると、全体がバランスよくまとまります。

バラの実をあわせて

秋ならではのバラの魅力の一つが「バラの実」です。春に咲いたバラが実になったもので、品種によりさまざまな形があり、ローズヒップとも呼ばれます。

秋ならではのバラの実を中心に、ブラックティとアカバセンニチコウを組み合わせています。
花器はコルクや木を使った温かみのあるものを選んで、季節の深まりを感じる、落ち着いた華やかさを演出してみました。

花器は同じまま、大きなバラの実を取り除き、ほんのりとピンクがかった「オールドファンタジー」というスプレーバラに変えました。
少しの変化ですが、こちらは冬の訪れを感じさせる雰囲気に。

一輪挿しは複数を集めて飾ると、雰囲気ががらりと変わります。お皿やトレイにのせるとまとまり感が出ますので、物足りなく感じた場合などにはお試しいただきたい、ちょっとしたコツです。

今度はバラの実だけを束ね、存在感のある花器に生けてみました。
素朴な印象があるバラの実ですが、見せ方ひとつでオブジェのような個性が生まれます。
バラの実が連なるラインと花器の丸みを呼応させることで、調和のとれたシルエットに。

贅沢にバラを愉しむ

華やかな姿と香りが魅力の「イブピアッチェ」。今回はその美しさを楽しめるよう、あえて一種類だけでまとめています。
花器はいくつもの陶花があしらわれたものを選びました。個性的なデザインが、イブピアッチェの華やかさをより引き立てています。

切り花として出回るバラには数多くの品種がありますが、実は香りを強く楽しめるものはそれほど多くありません。そうした中で、比較的手に入りやすいイブピアッチェは貴重な存在。
鮮やかなフューシャピンクの花からは、〈ダマスク・モダン〉と呼ばれる、甘く華やかな香りが漂います。

「銀葉グミ」と「アフリカンブルーバジル」を加えると、また違った印象に。
鮮やかなピンクには、ひとあじ違う葉色を持つ植物を添えると、お互いを美しく引き立て合います。

最初にご紹介したブラックティを使い、バラの実と銀葉グミで季節感を添えています。
いくつもの一輪挿しを連ねたような花器を使い、高低差を付けて生けています。バラは生け方によってはクラシックな印象になりがちなので、モダンな花器や組み合わせる花材をあえて選ぶようにすると、違う表情が楽しめます。

小さな姿も魅力

小ぶりなウォーターグラスに、エスカラスやブラックティ、バラの実を集めるように生けました。
添えた植物はアカバセンニチコウとアフリカンブルーバジル、ピンクのオンシジウムです。

切り分けた花材も、こんな風にまとめて飾ると、思わぬ景色が生まれます。
色数が多くなる場合は、落ち着いた色の花器にするとバランスよくまとまります。

真紅の小さなガラス花器には、エスカラスとたっぷりのバラの実を。赤と淡いピンクだけの、宝石箱を開けたような、ときめきのある花あしらいです。

最後に残った花や実も、少しの工夫でまた違った魅力を見せてくれます。
思いがけない花との出会いをさまざまな角度からお楽しみください。


「バラ」の基本情報

□出回り時期:通年(開花期は春と秋)
□香り:あり
□学名:Rosa
□分類:バラ科 バラ属
□別名:薔薇(そうび/しょうび)
□英名:Rose
□原産地:アジア、ヨーロッパ、中近東、北アメリカ、アフリカの一部
□花ことば:想いを託す、愛、美


花毎でご紹介しているバラのお話
・二十四節気の花あしらい 第三十話 小雪の花あしらい「薔薇色のバラ」
・薔薇のすすめ 第五話 「薔薇の実」
・旬花百花 第二十二話 「ロマンティックなバラ」


志村紀子

東京生まれ。国内を代表するホテル、外資系大手ラグジュアリーホテルのウェディングやパーティー装花に携わり、帝国ホテルプラザ店で活躍。
現在は第一園芸を代表するデザイナーとして、Noriko Shimuraブランドを展開。他にも社内スタッフ教育部門の講師、対外的なワークショップ講師、各種商品提案、空間装飾のデザインなどを担当している。

・第一園芸オンラインショップ「Noriko Shimura」
・夢の花屋 第五十一話《香水》に見立てる
・二十四節気の花あしらい 第五十三話 秋分の花あしらい「スプレーマム」

Text・Photo 第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子