第六十四話 立秋の花あしらい「ベルテッセン」
2026.08.07
暮life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに沿った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを、第一園芸のトップデザイナー・新井光史がご紹介します。
2026年8月7日から二十四節気は立秋に
秋はじまりの節気が立秋です。
「立」の付く節気は、どれもが季節のはじまりを告げる節目を表しています。
実際の天候は真夏のままですが、日は徐々に短くなり、ここから秋の気配が静かに深まっていくころです。
暑さの中でも、楚々とした可愛らしい花を楽しめるのが「ベルテッセン」です。
多種多様な姿をもつクレマチスの一種で、ベル形、つぼ形、チューリップ咲きのクレマチスとも呼ばれ、愛好家の多い植物です。
紫、ピンク、赤、白といった花色の中から、今回は紫とピンクのベルテッセンを使った花あしらいをご紹介します。

籠が魅力を引き出す
ベルテッセンは茎の曲がり方や花の向きで、個性が際立つのが魅力のひとつ。
繊細な茎を固定する花留めの工夫で、楽しみ方が広がります。
最初にご紹介するのは、東南アジアで使われているビク(魚籠)を使った花あしらいです。
裾が広がった一輪挿しの上にビクを取り付けて、紫のベルテッセンを一輪。ベルテッセンと籠は相性抜群なので、お互いを引き立てあい、涼やかな雰囲気を生み出します。

こちらは、長方形の籠を立てて使い、フレームのようなイメージで仕上げた花あしらいです。
水を入れた竹筒(中に納まるサイズのグラスが入っています)を籠の中に置き、花を生けています。
最初に花留めを兼ねた「あじさい」を入れ、そこにピンクのベルテッセン、「千日小坊(せんにちこぼう)」「姫木賊(ひめとくさ)」「グリーンスケール」を添えていきます。
籠の網目を支えにするように花材をあしらうと、立体的な花あしらいが完成します。

蓋付の籠に、小さな花器を入れた花あしらいです。
小瓶にベルテッセンとあじさい、千日小坊をいくつかに分けて挿し、籠の中に収めました。
蓋を少しずらしてアクセントに。
少しの花材でも、籠の効果で豊かな雰囲気が演出できます。


ひと足早く秋の気配を取り入れて
紫のベルテッセンに、夏から秋へのグラデーションを感じさせる植物を組みあわせました。
こげ茶色の籠の中に花を生けるためのグラスを置き、「ハスの実」「アジサイ」「ルリタマアザミ」「黒ほうずき」「キイチゴ(ベビーハンズ)」「グリーンスケール」を取りあわせています。
いくつかの花材を生けるときは、大きなものや重みのあるものから挿していくと、バランスよく生けやすくなります。

こちらはピンクのベルテッセンを主役に、ひとまわり大きな籠へあしらった花あしらいです。
ピンクの花色を引き立てるのは「カラジウム」「あじさい」「ヒューケラ」「ルビーファウンテングラス」「ペンステモン(実)」「吾亦紅(われもこう)」「千日小坊」といった、それぞれが個性豊かな植物です。
どれもが少しずつしか入っていませんが、異なる姿や色が調和した、秋のはじまりを感じる取りあわせです。

それぞれの花色を主役にした花あしらいを二つ並べてみると、見る角度によって、さまざまな植物が見え隠れする楽しみも。
紫の花には軽やかなグリーンの植物をあわせて涼やかに。ピンクの花には赤味のある植物を中心に組み合わせ、秋の気配を表現しています。
過ぎ行く夏と静かにはじまる秋。ベルテッセンの花色を変えることで、季節のグラデーションが楽しめます。

野に咲く姿を現す
二つ目の花あしらいで、フレームのように使った籠に、ざっくりと花をあしらってみます。
つる性のベルテッセンは枝どうしが絡まっていることもありますが、そうした場合は無理にほどかず、自然の姿のまま生けてみるのもよいかと思います。
そうしたベルテッセンの枝の流れを活かして、吾亦紅やルビーファウンテングラスなどを沿わせるように挿し、野の景色を表現しました。

籠の中には見えても気にならない、透明なグラスをいくつか入れて花を挿しています。
上からのぞいたときにも楽しめるように、「夕霧草(ゆうぎりそう)」をしのばせていますが、これは花留めとしての効果も。
ベルテッセンは素朴な植物がよく似合いますので、身近な植物を組みあわせて、唯一無二の花あしらいを楽しんでください。

「ベルテッセン(クレマチス)」の基本情報
□出回り時期(切り花):通年
□開花時期:品種によって異なる(代表的な品種の最盛期は5月~6月が多い)
□香り:品種によって異なる
□学名:Clematis
□分類:キンポウゲ科センニンソウ属(クレマチス属)
□和名:鉄仙/鉄線(てっせん)、風車
□英名:Clematis
□原産地:北半球の各地
□花言葉:変幻自在、旅人の喜び、精神の美しさ
花毎でご紹介しているクレマチスのお話
・二十四節気の花絵 第九十三話 夏至の花絵「クレマチス」
・週末の一輪 vol.38 クレマチス ── のびやかな美
・二十四節気の花あしらい 第五十話 夏至の花あしらい「クレマチス」

新井光史
神戸生まれ。花の生産者としてブラジルへ移住。その後、サンパウロの花屋で働いた経験から、花で表現することの喜びに目覚める。 2008年ジャパンカップ・フラワーデザイン競技会にて優勝、内閣総理大臣賞を受賞し日本一に輝く。2020年Flower Art Awardに保屋松千亜紀(第一園芸)とペアで出場しグランプリを獲得、フランス「アート・フローラル国際コンクール」日本代表となる。2022年FLOWERARTIST EXTENSIONで村上功悦(第一園芸)とペアで出場しグランプリ獲得。2025年3月に行われたFlower Art Award2025でも川口太聞(第一園芸)とペアで出場しグランプリを獲得した。 コンペティションのみならず、ウェディングやパーティ装飾、オーダーメイドアレンジメントのご依頼や各種イベントに招致される機会も多く、国内外におけるデモンストレーションやワークショップなど、日本を代表するフラワーデザイナーの一人として、幅広く活動している。 著書に『The Eternal Flower』(StichtingKunstboek)、『花の辞典』『花の本』(雷鳥社)『季節の言葉を表現するフラワーデザイン』(誠文堂新光社)などがある。
Text・Photo 第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子
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