第十六話 白露の花あしらい「ダリア」
2022.09.08
暮life
日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。
2022年9月8日から二十四節気は白露に
白露とは、秋の気配が深まる頃。夜には気温が下がり、早朝には朝露が草花に降りて、キラキラした輝きを楽しむ事が出来ます。日中の暑さもだいぶ和らぎ始めましたね。
実家の花壇では夏の終わりからこの頃にかけて大輪のダリアが咲いていました。
優雅でゴージャスなその姿に、花摘みを少しためらってしまった子供の頃を思い出します。
今日はそんな今が旬の気品あふれる「ダリア」をいけてみようと思います。
9月10日の中秋の名月を楽しむ傍らにもぴったり。シックな花々で深まる秋の気配をお部屋の中に取り入れてみましょう。
ふんわりと優しい形をつくる
今回は深まる秋を暖色のグラデーションで表現してみたくて3種類のダリアを選びました。黄色がかったオレンジの「ペアビューティー」、ピンク色で花びらの表裏の色が異なる「ピーチマカロン」、柔らかなアプリコット色の「ルル」という品種を選びました。
ダリアは同じ品種でも、産地や気温によって色合いや模様の出方、大きさも変わるので、花屋さんでお気に入りの一本を探すことも楽しみの一つです。
花瓶全体にふんわりいけることがコツ。花同士をぎゅっとまとめていけると、一つのかたまりのようになり、せっかくの綺麗な花が目立たなくなってしまいます。
自分の作りたい形をイメージしながら、一本一本の花の顔がきれいに見えるように気を付けていけていきましょう。
作りたい形をイメージすると失敗が少ないですよ。今回はオーバル(楕円形)をイメージして優しい雰囲気に仕上げました。
カラーリーフで秋の雰囲気を演出
シンプルにダリアの姿を楽しんだら、より秋を感じる花あしらいに。
加えたのは赤みがかった銅葉が美しいアメリカテマリシモツケ「ディアボロ」。
紅葉の季節を先取りして、ダリアに深みのある彩りを添えてみました。
ダリアは添える植物によって、モダンになったりクラシカルになったりと、いろいろな顔をみせる魅力的な花。気分や好みでお楽しみくださいね。
ボルドーをさらに加えて秋の深まりを表現
おいしそうな色に熟したブラックベリー、秋風に揺れるような風情を持つ吾亦紅(ワレモコウ)をプラスして、深まる秋を表現しました。
重量感のあるブラックベリーは器の下の方に配置し、軽い印象の吾亦紅は、伸びやかに広がりを持たせるようにふんわりいけましょう。
秋の庭のような風景をつくる
落ち着いた秋の雰囲気を楽しんだ後は、秋の庭のように華やかな花あしらいを楽しみましょう。
ジャパニーズアネモネの英名をもつかわいらしい秋明菊(シュウメイギク)のピンク色をプラスして、さわやかな秋風に揺れる庭の花たちをイメージしていけてみました。
秋明菊はあまり短くカットせず上の方にふんわりいけると、ナチュラルに仕上がります。
まだまだ暑いので、花同士をつけすぎず、風通し良くいけることを心がけると、蒸れずに美しい花を楽しむことができますよ。
秋風を感じるようなオブジェ
少しだけ傾いてきた日差しからも季節の移り変わりを感じるこの頃。
大きさの違うガラスの器に、バランスよくダリアと吾亦紅をいけました。
まだまだ暑さが残るこの時期も、ガラスを使うことで涼やかなイメージに。どこか秋風を感じるようなデザインに仕上げています。
光が左から入る部屋なので、左側に傾けることで花に影が出来ず、表情をきれいに見せることができます。
光の当たり方など場所に合わせた花あしらいは、上級者に見えるので覚えておくと便利ですよ。
一輪挿しを集めてリズミカルに
ダリアのスタイリッシュな花姿を楽しむには一輪挿しもおすすめです。
優雅な花、きりっと直線的な茎、引き締まった緑の葉など、ダリアの美しさを堪能することができます。
一本だけでも素敵ですが、一輪挿しを集めて、まとめて飾るのも華やかです。
器はあえて形の違うものを選んで、花の長さも高低差をつけてリズミカルに仕上げましょう。
食卓では数個を集めて華やかに、デスクやベットサイドにはお気に入りを選んで日替わりに楽しむなどフレキシブルに楽しんでみてください。
簡単フラワーアレンジメント!
花屋さんの定番、カゴにいけたフラワーアレンジメントのような見た目ですが、作り方はとても簡単です。
短くカットした花をコップなどに入れてカゴの中に入れるだけ。
花瓶で楽しんだ後、少し花がくたびれてきたら短くカットして、このようにスタイルを変えて楽しんでみましょう。短くすることで花持ちも良くなりますよ。
ダリアは外側の花びらから傷んできます。根本から花びらを引き抜くと傷みが早くなる場合があるので、花びらの根本に近いところからカットし、トリミングしてお手入れします。また葉は萎れやすいのでデザイン上必要なければ、早めに取り除くと良いでしょう。
花びらと水のきらめきで白露を楽しむ
ダリアは花びらが突然パラパラと散ってしまうことがあります。
でもまだきれいな花びらを捨ててしまうのはもったいない。そんな時は水に浮かべてダリアのスープに!
もちろん食用にはできませんが(笑)キラキラした水面と美しい花びらは、まるで朝露のようなさわやかさ。
白露にぴったりな花あしらいの出来上がりです。
最後までダリアを楽しんでくださいね。
ダリアは秋のウェディングにぴったり
日本で最も人気の結婚式シーズンは秋だってご存じでしたか?
気候が良くて祝日も多い9~11月が最も人気。
ウェディングシーンでもダリアは年間を通して大人気の花ですが、特に旬のこの時期は季節感もプラスできるのでおすすめです。
ガーデンパーティーなどカジュアルなウェディングには、ダリアに季節の小花を添えたナチュラルなブーケがぴったり。
ダリアの花言葉は「華麗、優雅、気品、感謝」
美しい花言葉を添えて、花嫁さんにプレゼントしてみても素敵です。
「ダリア」の基本情報
□出回り時期:通年(旬は9月~10月)
□香り:なし
□学名:Dahlia
□分類:キク科ダリア属
□和名:天竺牡丹(てんじくぼたん)
□英名:Dahlia
□原産地:中央アメリカ
□花言葉:華麗、優雅、気品、感謝など
花毎でご紹介しているダリアのお話
ダリアの由来やさまざまな品種「旬花百科」
第九話 「NAMAHAGEダリアと大曲の花火ダリア」
第二十話 「NAMAHAGEダリア」
水上多摩江さんが描く花の絵
二十四節気の花絵 第九十七話 霜降の花絵「ダリア」
谷中直子
第一園芸入社前から学生バイトで働く生粋の第一園芸人。
百貨店系ショップでいわゆる花屋さんを数年経験後、ホテル店に移動しブライダル関係を十数年経験。店長職を経て本社勤務に。
現在は広報担当としてリリースなどの社外発信を担当。
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