週末の一輪

週末、自分のために花を飾りましょう。
花を手軽に楽しむコツを第一園芸のフローリストがご紹介します。

vol.38 クレマチス ── のびやかな美

2026.05.28

life

週末に、ちいさな楽しみを。
「週末の一輪」は、日々の暮らしにそっとなじみながら、さりげない存在感を放つ季節の一輪を選び、異なる飾り方で少しずつ表情を変えながら、最後まで楽しみつくすための提案です。
月替わりで登場する第一園芸のデザイナーやフローリストが、生け方の工夫や花との向き合い方をご紹介。
毎週木曜の夕方、週末の始まりに、暮らしにそっと花を添えるひとときをお届けします。


表情豊かな花をシンプルに

しとしとと降る雨に包まれ、都心でも梅雨入りの気配がはっきりと感じられるころ。
水を得た植物たちはしっとりと艶をまとい、いきいきとした表情を見せています。
明るく華やかな花々を楽しんだ5月初旬から、季節の移ろいとともに、しっとりとした空気に寄り添う花へと、自然と目が向いていきます。

6月の入り口には、しなやかに蔓を伸ばし、雨の景色にもすっとなじむ《クレマチス》を主役に、「週末の一輪」をご紹介します。

■ 主役の花材《クレマチス》
“つる性植物の女王”とも称されるクレマチス。
その品種数は非常に多く、およそ300種の自生種があるとされ、さらに園芸品種を含めると2,000〜3,000種にもおよぶといわれています。
花の色や形は実に多彩で、ダリアのように幾重にも重なるもの、ベルのように可憐にうつむくもの、そして写真のように端正な十字状に咲くものなど、同じ花とは思えないほど豊かな表情を見せてくれます。
数ある品種の中から、今回選んだのは《クレマチス・デュランディ》。
しずくのような蕾がゆっくりとほどけると、深い紫の十字状の花が現れます。やがて中心の蕊(しべ)も開き、咲き進むにつれてより複雑で奥行きのある表情へと変化していきます。
しなやかに伸びるつるや、軽やかな動きを感じさせる葉の美しさも、クレマチスならではの魅力のひとつです。

「クレマチス」の基本情報
□ 出回り時期(切り花):通年
□ 開花時期:品種によって異なる(代表的な品種の最盛期は5月~6月が多い)
□ 香り:品種によって異なる
□ 学名:Clematis
□ 分類:キンポウゲ科 センニンソウ属(クレマチス属)
□ 別名:鉄仙/鉄線(てっせん)、風車
□ 英名:Clematis
□ 原産地:北半球の各地
□ 花ことば:変幻自在、旅人の喜び、精神の美しさ など

■ 花器について
手吹きガラスの花器を組み合わせて合わせました。
鮮やかなターコイズブルーが、クレマチスの落ち着いた紫を引き立てる、印象的なつくりです。
楕円形の口径は、置き方によって見え方が変わるのも魅力。
角度を少し変えるだけで、それぞれの花器と花の印象にさりげない変化が生まれます。
高さや大きさに変化をつけて並べることで、一輪ずつの花がよりいきいきと、立体的に感じられるのも楽しみ方のひとつです。

■ 生け方のコツ
クレマチスは、蔓の伸びやかさや自然なたわみが魅力の花。
その動きを活かし、同じ方向に流すように生けるのがポイントです。

生けるときの基本
・クレマチスの長さの目安は、大きな花器は花と花器が1:1、小さな花器は1:2程度
・大小の花器を使う場合は、花の長さに変化をつけると、空間に立体感が生まれます

扱い方の注意点
・クレマチスの枝はとても折れやすいため、やさしく丁寧に扱いましょう
・もし折れてしまった場合は、折れた部分にセロハンテープを巻いて固定すると、そのまま使えることもあります

安定させる工夫
・花器の中で枝が動いてしまう場合は、小石や丸めたワイヤーを入れ、枝を差し込むと安定しやすくなります


瑞々しさを閉じ込めて

クレマチスは、一輪でも印象的な存在感を放つ花。
花の美しさはもちろん、しなやかな茎や軽やかな葉まで、どこかドラマティックな表情を備えています。
そこで今回は、梅雨のなかにそっと佇むようなイメージで、花器の中に花を置くように生けてみました。
ほんの少しの工夫ですが、淡いグリーンのミストに包まれたような、幻想的な空気感が生まれます。

■ 花器について
前回のオオデマリでも使用した、手吹きガラスの花器です。
高さ約40cmの存在感あるフォルムながら、生け方を工夫することで、一輪の花も印象的に引き立てることができます。
クオリティの高いガラスならではの澄んだ質感が、光をやわらかく受け止め、クレマチスの繊細な表情をより美しく際立たせてくれます。

さまざまなクレマチス

先にご紹介したとおり、クレマチスは非常にバリエーションに富んだ植物です。
今回使用した《クレマチス・デュランディ》のほかにも、比較的入手しやすく、切り花でも楽しみやすい品種があります。

《ロウグチ》ベル咲き/鮮やかな紫色
《ベル オブ ウォーキング(ウォッキング)》八重咲き/淡い藤色
《エトワールローズ》ベル咲き/艶やかな濃いピンク

花の形や色合いの違いによって、同じクレマチスでも印象はさまざま。
好みや季節感に合わせて選ぶ楽しさも、この花の大きな魅力です。

■ 水揚げのコツ
クレマチスは、水が下がりやすい花。
ちょっとした下準備で、花もちがぐっとよくなります。

基本の水揚げ手順
・水に浸かってしまう葉や、量が多すぎる葉はあらかじめ取り除く
・枝の切り口を少し切り戻す
・切り口から3〜4cmほどの部分を、ハサミの柄などで軽く叩き、ほうき状にする

ぐったりしてしまったら
・もう一度切り戻しをする
・新聞紙などで枝全体をやさしく包む
・葉が水に浸からない程度の深めの水に入れ、数時間置く

ひと手間かけるだけで、花がゆっくりと元気を取り戻してくれます。

5月の担当:江辺 雄亮(第一園芸 フローリスト)
5月と6月をまたぐ花として、瑞々しい印象の紫のクレマチスを選びました。
一輪でも十分な存在感を放つ花のため、あえて他の草花は組み合わせず、茶花のようなイメージで、潔く生けています。
鉢物のクレマチスをお持ちでしたら、そうしたものを使って、花後もお部屋の中で再び楽しんでいただくのも素敵だと思います。
第一園芸では、このような少し珍しい花材も取り扱っています。
ぜひ、季節ならではの植物との出会いを楽しみに、ご来店ください。


花毎でご紹介しているクレマチスのお話
・二十四節気の花あしらい 第三十七話 芒種の花あしらい「クレマチス」 
・二十四節気の花あしらい 第五十話 夏至の花あしらい「クレマチス

第一園芸 日本橋店

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Text・Photo 第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子