二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第三十話 小雪の花あしらい「薔薇色のバラ」

2023.11.22

life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。


2023年11月22日から二十四節気は小雪に

小雪(しょうせつ)とは、雪が降り始める頃。文字通り、地域によっては小雪がちらつき始めます。

今年は11月に入っても最高気温が25℃を超える夏日があったりと、夏のような気候がずっと続いていたのに、あっという間にこの寒さです。爽やかで心地の良い秋はどこにいってしまったのでしょう。

今年は体験できなかった秋を感じてみたくて、深まる季節を表現する花を考えてみました。
紅葉のような深い色、ドラマティックな季節を表現する花…
そんな深まっていく季節を表現すべく選んだのは「薔薇色のバラ」です。

ひとつ前の節気、立冬から暦の上では冬ですが、関東近郊ではまだまだ木々は色づき始めぐらいでしょうか。
ドラマティックな色合いの花々で深まる季節を感じていただけたらうれしいです。

薔薇色のバラをシンプルに楽しむ

薔薇色というと何色を思い浮かべるでしょうか。
人によっていろいろな色が浮かびそうですが、色彩上での薔薇色は、まさに今回使ったバラのような鮮やかな紅色のことをそう呼びます。
薔薇色の人生、薔薇色の日々のように、薔薇色は希望や幸福に満ちている様子を表す、とてもポジティブな印象をイメージさせる色ですよね。

今回選んだバラは「アンフロレゾン」という品種で、とても香りが良く、ロゼット咲きと呼ばれるクラシカルな咲き方の花姿がとても美しい品種です。

そんな薔薇色のバラをシンプルに楽しみたくて、色ガラスの花瓶に投げ入れてみました。

あまり考えすぎずにバラの顔がきれいに見えるようにざっくりといけてみましょう。
器と花の長さとのバランスも全体の美しさを決める大切な要素ですので、少し離れたところから眺めて、花が一番美しく見える長さや角度を見つけます。
当たり前ですが最初に茎を短くしてしまうともう戻らないのでバランスを見て長さを調整しましょう。

最後に余分な葉を取り除いて全体のバランスを整えましょう。
あまり葉が多すぎても花が生きず、野暮ったい印象になりますし、葉を落とし過ぎると少し間の抜けた印象になります。こちらも一気に取ってしまうと戻らないので、花瓶にいけた状態で少しずつ取っていきましょう。
葉と葉が重ならないように、風が通るようなイメージでいけると、美しく、しかも蒸れずに花も長持ちしますよ。

クラシカルな雰囲気を楽しむ

同じバラを重厚感のあるネイビーのピッチャーにいけてみました。

いけるポイントはすらりと伸びた繊細な蕾はやや高い位置に、大きく開いた花はやや低い位置に配置すること。こうすると全体のバランスがとりやすいと思います。

またピッチャーのような非対称の器にいける時は、花も左右対称のバランスでいけるよりも、ハンドルとは逆の方向に花を傾けたほうがバランスよく仕上がります。

コクのある色をプラスして深まる季節を表現

暦の上ではもう冬ですが、秋が深まってもうすぐ冬に届くような、そんな季節のグラデーションを表現したくて、濃厚でコクのある色合いの花をプラスしてみました。

最初に加えたのはピンクの個性的な咲き方の「バラ オール4キュート+(オールフォーキュート)」と紅葉した赤い葉が美しい「ヒペリカム」です。冷え込んだ日の暖かな陽だまりのように優しいピンクのバラに、色づいた葉を添えて深まる秋を表現しました。

次に、秋色に色づいた「アジサイ ライムライト」と、艶やかな赤い実がかわいらしい「バラの実 アメイジングファンタジー」を加えました。目立つ赤い実は、三角形を意識して少しだけ離して配置すると効果的ですよ。

最後に加えたのは小さな赤い星型の花(ガクの部分が花に見えます)がこれからの季節にぴったりな「クリスマスブッシュ」。
全体をふんわりとまとめるようにいけて、季節のグラデーションを完成させました。

山々を錦に染めるような、深まる季節のフィナーレのように華やかな花あしらいです。

器をかえて洋風から和風へチェンジ

先ほど色ガラスの花瓶にいけた花を、マッドゴールドの花器と竹籠にいけかえてみました。

花は本当に器でがらりと印象が変わります。
洋から和への早着替えのようで、とてもはっとする変化を見せてくれます。

一輪挿しもイメチェン!

場所やシーンによって器を変えたり、1つずつ飾ったり並べて飾ったりと変化を楽しんで、バラの美しさを気軽に楽しんでみてくださいね。

バラは一輪で飾ると美しさがより際立ちます。
近くにおいて香りや花びらの繊細さ、蕾が咲き進む様子をぜひ楽しんでくださいね。

バラの顔の美しさを楽しむ

お手入れをして短くなってしまったり、折れてしまったりしたら美しいバラの顔をシンプルに楽しむ花あしらいはいかがですか?

散ってしまった花びらも美しいのでデコレーションに使って楽しみましょう。
今回は小さめのデザートディッシュに小さな一輪挿しをのせて、アフタヌーンティーのようなイメージにあしらいました。

茎を短くすると花持ちも良く、長い時間バラを楽しむことができますよ。
花首がぐったりと元気がなくなってきた際にはぜひ思い切って短くカットしてバラの花の美しさをお楽しみください。

「バラ」の基本情報

□出回り時期:通年((開花期は春と秋)
□香り:あり
□学名:Rosa
□分類:バラ科バラ属
□和名:薔薇(そうび/しょうび)
□英名:Rose
□原産地:アジア、ヨーロッパ、中近東、北アメリカ、アフリカの一部
□花言葉:美、愛情、など


花毎でご紹介しているバラのお話

二十四節気の花あしらい
第十二話 小満の花あしらい「バラ」
第五話 霜降の花あしらい「バラ」

バラの育て方のヒント
薔薇のすすめ

旬花百花
第二十一話「静岡のバラ2021」
第十七話 「静岡のバラ」
第四話 「バラ・今井ナーセリー」

二十四節気の花絵
第八十話 小満の花絵「薔薇・四季の香」
第五十六話 小満の花絵「複色のバラ」

谷中直子

第一園芸入社前から学生バイトで働く生粋の第一園芸人。百貨店系ショップでいわゆる花屋さんを数年経験後、ホテル店に移動しブライダル関係を十数年経験。店長職を経て本社勤務に。現在は広報としてリリースなどの社外発信を担当。