二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第十二話 小満の花あしらい「バラ」

2022.05.21

life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。


2022年5月21日から二十四節気は小満に

小満(しょうまん)とは、全ての生命が満ちてくる頃。
すがすがしさの中にほんの少し暑さを感じ、植物はいっそう成長の勢いを増していきます。

この頃の庭はまるで夢の中のような美しさ。
鮮やかな新緑の木々を借景に美しいバラが咲き誇り、うっとりするような香りが漂います。

今日は5月の庭の女王、華麗なバラをいけてみようと思います。お部屋の中に華やかな季節を取り入れてみましょう。

無造作に、ざっくりいける

今日はオレンジとピンクが混ざり合ったような鮮やかなアプリコット色がかわいらしい「コーラルハート」をチョイスしました。
よく見ると中心がオレンジで外側はサーモンがかったピンク。咲き方は美しいクォーターロゼット咲きで、見ているだけでわくわくするような主役級のバラです。香りが無いので、食事のテーブルにもおすすめです。

さて、それだけで美しいバラですが、その完璧な美しさゆえに色々考えて迷ってしまう時があります。
そんな時はあまり考え過ぎずに、茎の長さを揃えてざっくりいけてみましょう。
花瓶に対してきれいな顔をこちらに見せるように少し傾けていけた方が、重なる花びらや微妙な色合いの違いが楽しめるのでおすすめです。
この時、口が狭い花器に花を直立させてしまうと、バラの横顔しか見ることができないのでもったいないですよ。

バラの葉も花を引き立てる大切なパーツなので、バランスを見て多いようなら、カットしてすっきりさせましょう。更に水に付いてしまう葉は取り除きます。

空気を含ませたように、ふんわりいける

シンプルにバラの美しい姿を楽しんだら、小ぶりな花が数輪ついているスプレータイプと呼ばれるバラを加えてみましょう。

バラの間をスプレーバラで膨らますようなイメージでいけていきます。
先にスプレーバラをいけてから、バラをいけたい場所に置いていきましょう。スプレーバラがクッションになって、全体がふんわりといけられます。
花と花がぎゅっとなると、花の顔もきれいに見えませんし、蒸れて花持ちも悪くなってしまいます。

添えたのは「そら sola」というスプレーバラ。ばら作家 國枝さんのこだわりの和バラです。
ベージュがかったピンクから咲き進んでいくと、ミルクティーのようなやさしい色合いに。変化する花色とほんのりとした優しい香りも楽しむことができます。

枝ものを添えて季節感をプラスする

バラにもっと季節感をプラスしたい時は、季節の枝ものを添えてみましょう。

今回はニュアンスのある緑が美しい「ヒメミズキ」を合わせてみました。お互いを引き立てるような組み合わせで、この季節ならではの花あしらいになりました。

最初にヒメミズキをざっくりといけて全体の大きさを決めましょう。それからバラを添えていきます。
ヒメミズキの枝がバラを支えてくれるので、バラをいけたい場所に簡単に配置することができますよ。

枝ものは大きな状態で販売されていることが多いので、花瓶やいけたいサイズに合わせてカットしましょう。
この枝の場合は下から三番目の枝のすぐ上で切ると、1本から2本の使いやすいサイズの枝になります。

色をプラスして変化を楽しむ

シンプルに楽しんだ後は、差し色を加えてコントラストを楽しみましょう。
今回は5月の青空のような水色の「ニゲラ」を添えてみました。

同系色でまとめると優しい印象に、差し色を入れると元気な印象になることが多いです。ピンクと水色で少しポップな印象に仕上げて、花と色のパワーで五月病を遠ざけましょう!

器を着せ替えて変化を楽しむ

こちらは前回に続き花をいけた花瓶ごとバスケットに入れただけの簡単着せ替え。すっぽり器が入るバスケットなどがあれば、お花を変えることなく手軽でがらりと印象が変わるのでおすすめです。

こうしたバスケット以外でも、ランドリーバスケットやキッチンバスケット、エコバックなども花瓶のカバーにすると楽しいアレンジが楽しめます。

水中花のようなイメージで

短く切ったバラをグラスにいけてみました。
イメージは水中花。ガラス越しのバラの表情を楽しんでみましょう。

少しだけ花が疲れてきたら、短くカットしてこのような花あしらいもおすすめです。雰囲気も変わって涼し気な印象になります。

コロンとした姿を楽しむ

しばらくして元気がなくなってきたら、短くカットして一輪挿しで楽しんでみましょう。
ころっとした花姿に合わせて、丸いガラスの花瓶を選んでみました。

2つ並べてリズミカルに。少しだけ長さを変えたり、葉を添えたりしてコーディネートを楽しみましょう。
過ごす場所や気分に合わせて、ひとつずつ玄関やテレワークのデスクに飾ったり、ふたつ一緒にリビングに飾ってゆったりお茶をしたりと、生活のシーンに合わせてフレキシブルに花飾りを楽しんでみてはいかがでしょうか。

水に浮かべて最後まで花を楽しむ

バラは水が下がりやすくお手入れが難しい、とおっしゃるお客様が多いです。
本当は他の花と同じように正しいお手入れをすれば日持ちのする花なのですが、私も「やってしまった…」という時もあります(笑)

そんな時は、思い切って花首ぐらいからカットして水に浮かべて楽しみます。
「もうだめかも」と思うぐったりしたバラも息を吹き返すかもしれません。これが結構感動的なので、あきらめないでぜひお試しください。

ガラスの器に浅く水を張って、カットしたバラや花びらを浮かべてみましょう。
キラキラと光る水面もとても涼やかで癒されますよ。

これから気温が上がると花のお手入れも少し大変になってきますが、花の状態の変化に合わせて長さや器を変えて、スタイリングするように日々のお手入れを楽しんでみましょう。

「バラ」の基本情報

□出回り時期:通年
□開花時期:5月中旬~6月上旬(主な開花期)、6月中旬~11月(品種によって適時開花)
□香り:品種によって異なる
□学名:Rosa
□分類:バラ科バラ属
□和名:薔薇(そうび/しょうび)
□英名:Rose
□原産地:アジア、ヨーロッパ、中近東、北アメリカ、アフリカの一部


花毎でご紹介しているバラのお話

二十四節気の花あしらい
第五話 霜降の花あしらい「バラ」

バラの育て方のヒント
薔薇のすすめ

旬花百花
第二十一話「静岡のバラ2021」
第十七話 「静岡のバラ」
第四話 「バラ・今井ナーセリー」

二十四節気の花絵
第八十話 小満の花絵「薔薇・四季の香」
第五十六話 小満の花絵「複色のバラ」

谷中直子

第一園芸入社前から学生バイトで働く生粋の第一園芸人。
百貨店系ショップでいわゆる花屋さんを数年経験後、ホテル店に移動しブライダル関係を十数年経験。店長職を経て本社勤務に。
現在は広報担当としてリリースなどの社外発信を担当。