〈北海道ガーデン街道 vol.2 秋編〉第一話 光と風と景色を楽しむ 「十勝千年の森」
2018.11.06
旅travel
2018年9月、震災の風評で北海道ガーデン街道が寂しい状況と聞き、急きょ、秋真っ盛りの帯広~旭川を旅してきました。
最初に伺ったのは「十勝千年の森」。
2017年の夏に訪ねた時は曇り空でしたが、この日は十勝晴れといわれる晴天に恵まれました。
日高山脈のシルエットと空、そして美しい芝生。
またここに戻って来れた!という感動に包まれた旅の始まりです。
「アース・ガーデン/大地の庭」
十勝千年の森を代表する庭「アース・ガーデン/大地の庭」。
柔らかで青々とした、まるで上等なカーペットのような芝は光と風で表情が一変します。
セグウェイでこの庭を巡るツアーの方々が見え隠れするのも、景色のひとつ。
平地だったこの場所をガーデンデザイナーのダン・ピアソンさんは日高山脈を意識した複雑な高低差をつけ、ユニークな景色を作り出しました。
庭をつなぐ林の中で山漆の木でしょうか、紅葉の始まりを見つけました。
「メドウ・ガーデン/野の花の庭」
「メドウ・ガーデン/野の花の庭」へのエントランス。
秋色の花々が見事なコントラストを作り出しています。
手前の黒い実は素枯れて行く「エリンギウム」、アザミの一種でもともとは薄青の花。赤い穂のような花はタデ科の植物「ペルシカリア」。奥の黄色い花は「ルドベキア」。花びらが散った後に残る黒い種部分だけになっても鑑賞価値のある花です。
秋の到来を告げるような、きらきらと輝く薄(ススキ)の穂。
「ファームガーデン/農の庭」
「ゴート・ファーム」では羊や山羊が黙々と草を食んでいます。千年の森では、山羊から絞った乳で作る自家製チーズも購入することができます。
薄紫の「アスター・ツルビネルス」が満開に。たくさんの蜂や蝶が花に群がっていました。
「赤花松虫草(ワイルドスカビオサ)」にも蝶がたくさん。
一年ぶりにヘッドガーデナーの新谷みどりさんにお目にかかりました。
これはディスプレイ用のダリアを摘んでいるところ。新谷さんは一輪一輪の色を見比べながら、大切そうに花を摘んで行きます。
ガーデンカフェ脇にあるディスプレイスペースにはガーデナーによるデコレーションが。園内にある植物を使った、季節感のあるしつらえがいつも楽しめる場所です。
いつもこの言葉になっちゃうんです、といいながら今の想いを書いていただきました。
「庭は地球上で最も幸せな場所。The garden happiest planet on the earth.」
1年前、「秋はグラスが色づいてきれいなんですよ」と伺った時、どうしても見たかった秋の千年の森。
まさかこんなタイミングで再訪が叶うとは思ってもみませんでした。
北海道胆振東部地震の一報を知った時、まず思い浮かんだのは、私の北海道の唯一の知り合いであるガーデン街道の皆さんでした。
被災の状況が報道される中、あの庭はどうなっているのだろうかと心配が募り、お目にかかったガーデナーの皆さんに連絡を取り、状況を伺いました。
判ったのは、震災発生時は停電こそあったものの、どのガーデンも数日後には通常に近い公開を始めたこと。
震災の影響はほぼ無く、安全だということ。
でも、北海道の震災ということで、帯広も旭川も被災しているように思われて、入場者が激減していること。
花屋としてできることは何か。
被害にあわれた方々に寄付をすることもひとつの方法だけれども、花屋は花屋のやり方で応援する方法はあるだろうか…
何より、紅葉が始まった美しい秋の庭が、人の目に触れないまま冬じまいしてしまうのは本当に惜しい。
こんな時だからこそ、植物が持つ力が役に立つのではないか…
そんな思いから、北海道ガーデン街道の魅力をお伝えすることで、ひとりでも多くの方にガーデンを知って、訪ねてもらうことが、花屋にできる復興のお手伝いではないかと考え始めました。
「微力だけど無力じゃない。」
かつて神戸の震災時に50ccバイクに乗って、被災者が欲しいものを細かく聞き取りながら、必要な物資を届けるボランティアをなさっていた作家の田中康夫さんの言葉です。
大きな力にはなれないけれど、私たちにできることをやってみる。
それが今回の旅のテーマです。
震災発生から20日後、植物も人も元気な「北海道ガーデン」の姿を7回に渡ってお伝えします。
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〈北海道ガーデン街道 vol.1〉第五話 1000年先の未来へつなぐ庭 「十勝千年の森」【前編】
〈北海道ガーデン街道 vol.1〉第六話 1000年先の未来へつなぐ庭 「十勝千年の森」【後編】
十勝千年の森
北海道清水町羽帯南10線
http://www.tmf.jp
冬季休業期間があります。営業時間、入館料などの詳細につきましては十勝千年の森のWEBサイトをご覧ください。
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