花の旅人

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思いがけない花との出会いを楽しむ、花の旅のガイド。

〈北海道ガーデン街道 vol.1〉第一話 1000品種を超える宿根草を扱うナーセリーとガーデン「大森ガーデン」

2018.07.20

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北海道にはガーデン街道と呼ばれる個性豊かなガーデンが集中している、大雪~富良野~十勝を結ぶ、全長約250kmの街道があります。
日本のコッツウォルズ、またはロマンティック街道と呼ぶに相応しい、北海道ならではの庭園文化が楽しめる場所と聞いたわたしたちは2017年7月中旬、帯広から旭川にかけて約170kmにわたる7つのガーデンを巡る旅に出かけました。

家族で営むガーデン

最初に向かったのは、とかち帯広空港から約40km、十勝の南部、広尾町にある「大森ガーデン」です。
こちらは北海道ガーデン街道の各ガーデンに植物を供給しているナーセリーでもありながら、その植物を使った美しい庭を楽しめる、大森さん一家が運営するガーデンです。
とてもきさくで素敵な親子でらっしゃる、社長の大森康雄さんとご子息の謙太郎さん親子から、ガーデンの見どころやナーセリーの仕事を伺いました。

ナーセリーができるまで

「私は東京出身で、もともとは牛を飼う目的で北海道へ来たんです。畑をやったり色々している内に家内が花が好きだったこともあり、牛に自分の時間をとられてしまう…花も同じなんですがどうせだったら花の方がいいかなと。
でも、十勝は北海道の中でも特に寒さが厳しい地域なんです。1985年から始めたグランドカバープランツの生産の第一条件は、この環境で丈夫に生育できることでした。そこで、北海道の植栽に向く宿根草* を探すことから始めました。」

* 宿根草(しゅっこんそう) 生育に適さない時期には地上部(葉や茎など)が枯れますが、その時期が過ぎると、再び発芽して生育を始める植物のことを指します。

「その当時は耐寒性に関した情報が無かったので、ナーセリーの中にトライアルガーデンを作って、越冬させる試験を繰り返したんです。その試験ガーデンをきっかけにして、生産した宿根草を提案できるモデルガーデンを妻の敬子がデザインして作りました。
このガーデンは構築物に頼らず、草花で魅せることに重きを置いてやっています。」

「最初はビニールハウスを改造して、生産した宿根草を売っていたんですが、だんだんと「大森農場カントリーガーデン」が花苗のブランドとして道内を中心に、皆さんに知って頂けるようになりまして、2008年に一家総出で現在の店舗を作ったんです。」

ガーデンの移ろい

北海道のガーデンは初夏から秋にかけて、刻々と表情が変化するといいます。日々植物と向き合う大森さん一家が感じる、ガーデンの変化を教えていただきました。

「まだ花が少ないですね。これから秋に向けてもっと咲きます。エキナセア* も出始めぐらい。それからセファラリア ギガンティア(ジャイアント スカビオサ)* は名前の通り、大きくなってこぼれ種でどんどん広がるんです。
このガーデンに入ってる花の種類は800弱ありますが、例えば、黄金葉はきれいだけど、こればっかりになるとうるさくなっちゃう。手持ちの品種は1000~1200あるんですが、まだ植え切ってません。
古い品種も持ってますが、何でもかんでも植えてしまうと、魅力がなくなってしまうので…」

* エキナセア イガグリのような中心部に細長い花びらが放射線状に広がる花が特徴の、夏に咲く宿根草。様々な色合いの花があります。
* セファラリア ギガンティア (ジャイアント スカビオサ) 松虫草の近縁種の花。レモンイエローの可愛らしい花が咲き、背の高さが2m近くにもなる宿根草。

お気に入りの場所

「僕はネペタ(キャットミント)* があるところからカフェを見た場所が好きなんです。
ここはビスカリア* の花が伸びて花盛りになるとまったく景色が違って見えるんですよ。」

* ネペタ(キャットミント) イヌハッカとも呼ばれる、甘く爽やかな香りがする宿根草。
* ビスカリア 細い茎に桜のような小花がふわっと咲く、可憐な宿根草。

みっちりと花が付いたネペタ、色鮮やかに群生するアスチルベ…、十勝の地に根付いた植物のたくましさに植物が本来持つ力を感じつつ、大森ガーデンを後にしました。

第二話は北海道原産の花を集めた六花の森へ。

大森ガーデン

北海道広尾郡広尾町字紋別14線73番地-2
https://www.instagram.com/omori_garden_nursery/
冬季休業期間があります。営業時間、入館料などの詳細につきましては大森ガーデンのインスタグラムをご覧ください。