薔薇のすすめ

若手バラ育種家の
忽滑谷 史記(ぬかりや ふみのり)さんが
伝える、
見て、育てて楽しむバラのお話。

第二話 「バラのかおり」

2019.08.23

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「コンスタンツェ・モーツァルト」Constanze Mozart 作出年:2012年│作出者:Tim Hermann Kordes│作出国:ドイツ│系統:フロリバンダ│咲き方:四季咲き│花径:中大輪│香り:強香(フルーツ)

みなさんは、香料の世界で三大花香とされている植物をご存じでしょうか?
ジャスミン、スズラン、そしてバラです。
中でも、ジャスミンは香りの王様、バラは香りの女王様とも言われます。

バラの香りは香水としても親しまれていますし、香料として化粧品や石鹸、入浴剤など生活の中で様々な製品に使われています。
愛用している方も多いのではないでしょうか。

香りの植物として親しまれているバラですが、実は、すべてのバラの花が良い香りを持つわけではありません。

バラの切り花を手にした時、あまり香りがしないと感じたことはないでしょうか?
香りが強いバラは花持ちが悪い傾向があります。
そのため、花が長く楽しめる性質が重視される切り花用のバラでは、花持ちが良くするように品種改良が進んだ結果、香りの少ない品種が多くなっています。

一方で、庭植え用のバラには、香りを楽しめる品種がたくさんあります。
良い香りのバラを身近に楽しむことができるのは、自分でバラを育てることの大きな利点かもしれません。

さて、「バラの香り」と言ってもその香りは様々です。
品種ごとに香りの特徴が違うため、香りはバラの性質の中でも大事な個性となっています。

バラの香りは大きく分けて、以下の7つに分類されています。7つの香りの説明と共に、その香りがするバラをご紹介します。


■ダマスク・クラシック
西洋の原種系のバラである「ロサ・ダマスケナ」や「ロサ・ケンティフォーリア」などの香りです。
香料の原料として古くから使われてきており、まさにバラの香水の香りがします。

「ロサ・ダマスケナ」Rosa damascena 作出年:1560年以前│系統:ダマスク│咲き方:一季咲き│花径:中輪│香り:強香(ダマスク)

■ダマスク・モダン
ダマスク・クラシックが様々な香りと混じり、現代風になった香りです。

「マイスター・ジンガー」Meistersinger 作出年:2015年│作出者:忽滑谷史記│作出国:日本│系統:シュラブ│咲き方:四季咲き│花径:中輪│香り:強香(ダマスク/フルーツ)

■スパイシー
クローブ(丁字)に似た、香辛料を感じる香りです。

「ブルー・フォー・ユー」Blue for You 作出年:2007年│作出者:Peter J. James│作出国:イギリス│系統:シュラブ│咲き方:四季咲き~返り咲き│花径:中輪│香り:強香(スパイス)

■ミルラ(アニス)
ハーブのアニスを感じる香りです。

「アンブリッジ・ローズ」Ambridge Rose 作出年:1990年│作出者:David Austin│作出国:イギリス│系統:シュラブ│咲き方:四季咲き│花径:中大輪│香り:強香(ミルラ)

■フルーティー
フルーツの特徴を持った香り。
モモやリンゴ、ライチのような香りや、オレンジやレモンのような柑橘系の香りなどがあります。

「パウル・クレー」Paul Klee 作出年:2014年│作出者:忽滑谷史記│作出国:日本│系統:フロリバンダ│咲き方:四季咲き│花径:中輪│香り:強香(ダマスク/フルーツ)

■ティー
紅茶のような香りがします。

「レディ・ヒリンドン」Lady Hillingdon 作出年:1910年│作出者:Lowe & Shawyer│作出国:イギリス│系統:ティー│咲き方:四季咲き│花径:中輪│香り:強香(ティー)

■ブルー
薄紫や赤紫の花色のバラがもつ、洗練された香りです。
バラには青い花色がなく、それを目指して同系色同士で交配が重ねられた結果生まれた香りです。

「エンチャンテッド・イブニング」Enchanted Evening 作出年:2009年│作出者:Dr. Keith W. Zary│作出国:アメリカ│系統:フロリバンダ│咲き方:四季咲き│花径:中輪│香り:強香(ブルー)

バラは早朝に香りの成分が作られます。
陽が昇り気温が上がってくるにつれて、香りの成分が飛んでしまいます。
香りを楽しみたい場合は午前中に香りをかいでみましょう。
開き始めの状態の花を選ぶと、より強い香りを感じることができます。

「バラの香り」と一口に言っても、実際には品種によって生成する香りの成分が違うため、多彩な香りをもっています。
香りのほとんどないバラもありますし、強烈の香りのバラもあります。
香りの強いバラの中でも、むせるような香りのものもありますし、洗練されたとても良い香りのものもあります。
バラの見ごろは、春(5月~6月頃)と秋(10月~11月頃)です。
ぜひお近くのバラ園で香りの違いをかぎ比べて、お気に入りの香りのバラを見つけてみてください!

忽滑谷 史記(ぬかりや ふみのり)

バラ育種家。埼玉県飯能市を拠点に、オリジナルブランド『Apple Roses』品種の育種・生産およびネットショップでの販売を行う。病気に強く誰でも簡単に育てられる、魅力的な品種づくりを目指している。