二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第九話 雨水の花あしらい「チューリップ」

2022.02.19

life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきましたが、この「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして、最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。


2022年2月19日から二十四節気は雨水に

雪から雨に変わり、氷が溶けて水になる雨水のころ。草木が芽生え、昔から農耕の準備を始める目安とされてきました。
我が家のベランダでも、眠っていた種が芽吹いてちょっとした春を感じています。
でも本格的な春はまだ先。三寒四温を繰り返しながらですが、確実に春に向かっていきます。

今回は春のお花の代表格「チューリップ」をいけてみようと思います。
まるで雪解けで芽吹いたフキノトウのように瑞々しい緑を帯びた白いチューリップに、早春ならではの爽やかな花もプラスして気分を上げていきたいと思います。

のびのびと、無造作にいける

チューリップの魅力は花のかわいらしさももちろんですが、すらりと伸びる茎や尖ったスタイリッシュな葉も魅力のひとつ。

まずは茎の美しさを楽しむために、なるべく長いままいけてみましょう。葉は1、2枚を残してすっきりさせた方が長持ちしますので、水に浸かりそうな葉や(もったいないですが)その他の葉は取り除きます。

下処理が出来たら、花瓶に投げ入れてみましょう。
チューリップは葉がストッパーになって形が固定しやすいので、いけたい位置に花を挿すことも簡単。あまり考え過ぎ過ぎずにざっくり自然に投げ入れてみましょう。
今日は左から光が来る部屋に合うように、太陽に向かうイメージでいけてみました。

いけたばかりの時と翌日の姿の変化が楽しめるのもチューリップの魅力。
品種にもよりますが、しだれて咲いていたものも、翌日にはピンと上向きに変わっていることも。
この左に向かっていけたチューリップも、翌日には直立していました(笑)
水替えのたびに花の向きを変えたり、まっすぐ伸びやかに上に向かう姿を楽しむのもいいですね。チューリップは動きも楽しめる花です。

チューリップは水をぐんぐん吸いますが、深く水に浸かるのは苦手。水はあまり高く張らずに、毎日減った分の水を足してあげましょう。

今回選んだチューリップはグリーンのラインがスタイリッシュな「スプリンググリーン」と、ころっとしたフォルムがかわいらしい八重咲の「パスワード」。花持ちがよく、長く楽しめる品種です。

緑や白の花は、テレワークで疲れた目にも優しく、私にとっては癒し効果が抜群。
草木が芽吹く季節に合わせたフレッシュグリーンの色合いで、部屋の中に春を呼び込みましょう。

 

花材をプラスして早春の芽吹きを表現

チューリップだけでも十分素敵ですが、お手入れで短くなってきたら、枝ものとグリーンを足してより春らしくイメージチェンジ。
同じ花瓶に、白い小花が咲く枝もの「ユキヤナギ」と、斑が入ったツル状のグリーン「コロニラ・バリエガータ」を加えてみましょう。(チューリップの本数が多い場合は、少し減らすといけやすくなります)

最初にチューリップで形をきめたら、ユキヤナギで全体をふんわりと見せます。チューリップと枝ものをつなぐ役割として合間にコロニラを挿すと一体感が出て、ナチュラルな雰囲気に仕上がります。
ユキヤナギがだんだんと咲き進んで、雪が積もったように白くなっていく姿も楽しみのひとつです。

前出の白とグリーンのアレンジにミモザを加えてみました。
黄色が入ると、更に春らしさが増しますね。

 

ユニークなシルエットを活かしていける

たくさんの本数のチューリップも素敵ですが、少ない数をいけてもかっこよく決まります。
いきいきとした葉は捨て難いので初日は葉を付けたまま楽しみ、数日後には葉をすべて取り除いて、動きのある姿を楽しみましょう。チューリップのユニークなシルエットが活きる、お気に入りの花瓶にいけてみてくださいね。
水替えの時に葉を取り除くことで花も長持ちしますし、変化も楽しめますよ。

 

集めて、分けて飾る

大きさや形が異なるガラス瓶に一本ずつランダムにいけます。
花の長さや向きも変えるとバランスがとりやすいですよ。

日中はリビングやキッチン、玄関などバラバラに置いておいて、夜は寝室に集めてみるといった、一輪挿しならではのフレキシブルな花飾りを楽しんでみましょう。

チューリップは切り花になってからも茎が伸びたり、花びらが大きくなったりと成長する花。そんな様子も一輪挿しなら観察しやすいですね。

 

チューリップを最後まで楽しむ

チューリップは咲き進んで行くと、花びらは薄く透けたような感じになり、葉はだらりとして丸まっていきます。
花に元気がなくなってきたら、思いきって花首ぐらいの長さまで短くカットしてアレンジしてみましょう。

チューリップだけでもすっきりとして素敵ですが、コロニラを添えて動きをだしてみました。つる性の植物はしなやかで曲げやすいので、浅い器の中に丸めてあしらうことも簡単。二つの器を並べて使えば、少ない本数でも広がりが出てボリュームアップして見えます。

きらきら輝く水面もデザインのひとつ。
最後の最後は花びらを水面に散らしても素敵ですよ。

 

春だけの花を贈る

老若男女、抜群の知名度を持つチューリップはプレゼントにしても間違いない花!
今回はグリーンと白の花を使いましたが、たくさんの色や形がありますので、あなたのお気に入りの花を探してください。

まずはご自分でチューリップの美しく不思議な姿を楽しんで、その虜になったらぜひ大切な方へプレゼントして、魅力を伝えてくださいね。

「チューリップ」の基本情報

□出回り時期:11月~4月
□開花時期:3月~5月
□香り:あり
□学名:Tulipa
□分類:ユリ科チューリップ属
□和名:鬱金香(ウコンコウ/ウッコンコウ)
□英名:Tulip
□原産地:地中海沿岸から中央アジア


花毎でご紹介しているチューリップのお話

チューリップにまつわるさまざまなお話「旬花百科」
第十二話 「ユニークなチューリップ」
第二話 「チューリップ」

水上多摩江さんが描く花の絵
二十四節気の花絵 第五十一話 啓蟄の花絵「チューリップ」

トップデザイナーによる見立ての花
夢の花屋 第三話 「キューケンホフのチューリップガーデンに見立てる」

谷中直子

第一園芸入社前から学生バイトで働く生粋の第一園芸人。
百貨店系ショップでいわゆる花屋さんを数年経験後、ホテル店に移動しブライダル関係を十数年経験。店長職を経て本社勤務に。
現在は広報担当としてリリースなどの社外発信を担当。