第二十一話 立春の花あしらい「ラナンキュラス」
2023.02.04
暮life
日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。
2023年2月4日から二十四節気は立春に
立春とは、暦の上で春が始まる日。そして最初の二十四節気でもあります。
今は立春よりもその前日、冬と春を分ける節分の方がポピュラーになっていますよね。
私も小さい頃、大声で豆を蒔き年の数だけ食べたりして厄を払い立春を待つ、という伝統的なイベントを当たり前のようにやってきました。
豆はそんなに好きではなかったけれど、なぜかたくさん食べることができる祖母をうらやましかった懐かしい思い出。そんな厄除けのおかげか、今では豆をお腹いっぱいに食べられる歳になることができました(笑)
春が始まると言ってもまだまだ寒さは続きますが、ふとした時にふんわりと梅や沈丁花の甘い香りが漂ってくると、春の兆しのようでうれしくなります。
今日はそんな春の始まりにふさわしい、透けるように繊細な花びらが幾重にも重なるロマンティックな「ラナンキュラス」をいけてみようと思います。
この季節限定の花をお部屋に取り入れて、暦の春の始まりを華やかな気持ちで過ごしましょう。
春色グラデーションをふんわりといける
今回は春が始まるわくわく感を表現すべく、優しいピンク系のグラデーションになるような花色をチョイスしました。
スタンダードなピンクの品種と合わせたのは、白色にうっすらピンクの覆輪の「小春てまり」と、フリルのように波打つクリーム色の花びらが繊細な印象の「モルバン」という品種です。
ラナンキュラスは花の大きさ・重さに対して、茎が細くつるつるとした質感のため、花瓶に引っかかりにくく、思った場所に花を置くのは難しいかもしれません。
花の長さを同じぐらいに揃えたら、茎を手で束ね、パスタをゆでる時のようなイメージで花瓶に入れてから水の中にぱっと離します。
それから花の顔がきれいに見える向きや角度を調整してみましょう。
花どうしが近づきすぎた場合も少し離しておきます。
意外かもしれませんが、ラナンキュラスは驚くほど大きく咲き進んでいきますので、花と花の距離が近いと蒸れてしまって傷みも早くなります。そのため、あらかじめふんわりいけてあげましょう。
また、ラナンキュラスは繊細な印象がありますが、実はとても丈夫で長持ちする花です。
はじめは丸くぎゅっと固まったような姿ですが、咲き進むとシャクヤクやバラのようなゴージャスな姿に。
ぜひ、日々の変化もお楽しみくださいね。
1枚目は咲き始め、2枚目は咲き進んだ状態です。一週間ほどで花の大きさは倍ほどに大きく、中央の固く閉じていた花びらもめしべが見えるぐらいにほころんできます。
小花を添えて新しい季節の始まりを表現
ふんわりと優しいラナンキュラスの姿をシンプルに楽しんだ後は、春らしい小花プラスして春の始まりを表現してみましょう。
加えたのは淡い桜色の小さな小花がかわいらしいナデシコの仲間「サクラコマチ」と、白いレースのような形の小花が繊細な印象の「オルレア」です。
ラナンキュラスをはじめにいけてから全体の大きさを決めて、隙間に小花をいけていきます。
どちらが先でも大丈夫ですが、今回はオルレアの方が大きかったので、オルレア、サクラコマチの順番でいけました。
いける基本は大きなものから小さなもの。この順番ですと失敗が少ないかと思います。
器を着せ替えて変化を楽しむ
こちらは上で紹介した花あしらいを、花瓶ごとバスケットに入れただけの簡単着せ替えです。すっぽり器が入るバスケットなどがあれば、お花を変えることなく手軽に印象が変わるのでぜひお試しください。
ランドリーバスケットやキッチンバスケット、エコバックなどもおすすめです。他にはバンダナなどのクロス類を花瓶に巻いても楽しいアレンジが楽しめますよ。
バスケットにいれると同じ花でもよりカジュアルな印象になりますので、私は週末などゆったりと過ごしたい時には花あしらいをカジュアルに変化させて楽しんでいます。
ひとつにいける、分けていける
同じ花、同じ花器でも、まとめるのと分けていけるのでは、がらりとイメージが変わります。
ブーケのように、ぎゅっとまとまったかわいらしい姿をコンパクトに楽しみたい時にはひとつにまとめて。
スタイリッシュに一輪一輪の美しさを楽しみたい時は一輪挿しを一列に並べて。または、リビングや寝室など、ご自分の過ごす部屋ごとにフレキシブルに楽しみたい時はそれぞれの部屋に一輪ずついけて楽しんでみてください。
小さな一輪挿しでかわいらしく
キッチンや玄関、寝室などにもおすすめの、かわいらしくコンパクトな花あしらいです。
淡いピンクと黄色を合わせて明るくポップな印象に仕上げました。
このように花瓶をお好みのお皿にのせてあげると、額縁のような効果で花姿がより際立って素敵に見えますよ。
陶器やガラスのお皿でもぜひお試しくださいね。
水に浮かべて楽しむ
かわいらしい上に長持ちするラナンキュラスですが、花の重さに耐えきれず茎が突然折れてしまう時も。そんな時は花首からカットして水に浮かべて楽しみましょう。
今回は、ボトルに閉じ込めたような姿にしてみたくて、シェイプされたピッチャーにあしらいましたが、長く楽しみたい方はこの形の花器は避けましょう。
紹介しておいて申し訳ないのですが、どんどん花が大きく咲いてくるので、取り出すのが難しくなってしまうからです。
とはいえ一期一会のように今だけの姿を楽しむ事も花あしらいの楽しみです。
ラナンキュラスは花首だけでも長く楽しむことができるので、シェイプされていないお皿などに浮かべて最後まで楽しみつくしましょう!
ラナンキュラスの新定番「ラックス」
ラナンキュラスの品種「ラックス」は、まるで花びらにワックスを塗ったような、つるつるの質感と光沢があります。そのためラナンキュラスとワックスを合わせて「ラックス」と名づけられたそう。
ラックスはたくさん枝分かれして多くの蕾を付け、それが徐々に咲いてくる様子も楽しむことができます。
また通常のラナンキュラスの切り花には葉が無いものが多いのですが、ラックスは鮮やかな緑の葉が付いた状態で花屋に並びますので、緑と花色のコントラストも美しい、ボリューミーな品種です。
このように、色や形も様々で、まるで違う花のようなバリエーションの豊富さもラナンキュラスの魅力です。
第一園芸の店頭でも「ラナンキュラスフェア」を開催中です。お好みのラナンキュラス探しにぜひ足を運んでみてくださいね。
「ラナンキュラス」の基本情報
□出回り時期:12月~4月
□香り:なし(一部香る品種有り)
□学名:Ranunculus asiaticus
□分類:キンポウゲ科キンポウゲ(ラナンキュラス)属
□和名:花金鳳花(はなきんぽうげ)
□英名:Ranunculus
□原産地:中近東からヨーロッパ南東部
□花言葉:とても魅力的、華やかな魅力 など
花毎でご紹介しているラナンキュラスのお話
水上多摩江さんが描く花の絵
二十四節気の花絵 第九十話 啓蟄の花絵「ラナンキュラス」
ラナンキュラスの由来やさまざまな品種
旬花百科 第十一話 「ラナンキュラス」
谷中直子
第一園芸入社前から学生バイトで働く生粋の第一園芸人。
百貨店系ショップでいわゆる花屋さんを数年経験後、ホテル店に移動しブライダル関係を十数年経験。店長職を経て本社勤務に。
現在は広報担当としてリリースなどの社外発信を担当。
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