二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第二十二話 啓蟄の花あしらい「桜」

2023.03.06

life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。


2023年3月6日から二十四節気は啓蟄に

啓蟄とは、土の中で冬眠していた生き物たちが目覚める頃のこと。寒さもだいぶ緩んできましたが、太陽の光を気持ちよさそうに浴びる生き物たちを見かけるのはもう少し後になるように感じます。

小さい頃、近所の桜の木の下で摘んだクローバーの花で花冠を作り、頭にのせてお姫様気分で青空の下を散歩していると、妹が花冠に付いたかわいらしいテントウムシを見つけてくれました。しかし、おまけにクローバーにびっしりと付いたアブラムシに気付いてしまい半べそをかいた、今でも色あせない空色と桜色の春の思い出です。

3月に入ると様々なメディアで桜の開花情報が流れてきますよね。2月1日からの最高気温を足していき、600度に達すると開花する「600度の法則」など、日本人の桜への興味は相当なものだなと思います。
今回は今や海外の方も楽しみにしている日本の春の風物詩「桜」をいけてみようと思います。
早春しか手に入らない桜を暮らしに取り入れ気分を上げて、気温の変化の激しい3月の体調を整えましょう。

枝ぶりを活かしてのびのびといける

今回は淡い桜色で小ぶりの花が可憐な品種「啓翁桜(けいおうざくら)」を選びました。花屋で入手しやすい、切り花界ではポピュラーな桜のひとつです。

桜は枝の向きや曲がり方が色々で、それぞれ個性があります。

花屋で購入する際は左右に曲がったもの、真っ直ぐなものなどから、飾る場所やお手持ちの花器にあったものを選びましょう。

今回は向かって右が壁なので、右側はコンパクトに、左側に伸びていくようなイメージでいけてみました。

このように数本をいける場合は、花瓶にいける前に中心になる枝、左右に傾ける枝、表情がきれいな主役に使いたい枝に分けておくと迷いませんよ。

桜は枝が固い「枝もの」なので、あらかじめ器のサイズが分かっていれば花屋に伝えて、好みのサイズにカットしてもらうこともできます。ぜひ、プロに相談してみてくださいね。

春のワクワク感を鮮やかな色で表現

桜の凛とした美しさをシンプルに楽しんだ後は、鮮やかな春の花々をプラスして、春のワクワク感のある花あしらいに。

加えたのは春の花畑でもおなじみのカラフルな花「ポピー」と、透明感のあるピンクの小花「スプレーデルフィニウム」、水色の小花が可憐な「ワスレナグサ」と、うつむいて咲く白の小花「バイモユリ」です。

桜で大体の大きさや形を決めてから、隙間に小花をいけていきます。

たくさんの色を使う場合はあまり難しく考えずに、絵を描くように好きな色を配置したい場所にいけてみましょう。

いつもいける順番は大きなものから小さなものが基本。
今回の場合は、まずスプレーデルフィニウムを全体にふんわりといけ、ポピーでフォーカルポイント(主役になる場所)を作り、ワスレナグサを散りばめて軽やかさをプラス。そして、バイモユリを足元に添えました。

とはいえ長さやボリュームによっていける順番は変わりますので、あまり考えすぎずに色のバランスを見ていけてみましょう。

一輪の美しさを並べて楽しむ

同じ花を使って器を変えて楽しんでみました。
このような形の花器が無くても、小さな一輪挿しを横に並べるだけで、ディスプレイのような花あしらいになりますよ。

この花あしらいでは屏風を描く日本画家になったような気分でいけてみました。
奥行きはあまりなくても、一輪一輪の美しさを楽しむことができるので、桜をじっくり鑑賞するのにもぴったりです。

花瓶にふんわりと大きくいけるよりも、コンパクトで簡単に花を楽しむことができます。
隣同士の花を入れ替えたり、長さを変えたりするだけで気軽に模様替えもできる、おすすめの花あしらいです。

お行儀よく、かわいらしく

日本の春を代表する花、桜には特別感のある花あしらいを。
カッティングボードに花器を並べて、少しだけきちんと感を出してみました。

一本の桜を凛といけるのも素敵ですが、枝の途中でカットし2本に分けてこのように並べると、程よいフォーマル感のある上品な花あしらいが出来上がります。
コンパクトなので玄関やダイニングにもおすすめですよ。

バスケットにふんわりといける

枝いっぱいに花がつく桜は花瓶にいける時、水につかる部分の花や小枝は水が濁る原因になるので取り除きますが、きれいな花を捨てるのはもったいないですよね。
そこで、取り除いた枝をカップに入れて、小さなバスケットに入れました。
丈の短い桜でも可愛らしく仕上がるので、桜が咲き進んだ後に残った、まだまだきれいな桜の楽しみ方としてもおすすめですよ。

水に浮かべて儚さを楽しむ

ガラスの器にお手入れ中に落ちてしまった桜を浮かべてみました。
キラキラときらめく水面に桜色の花びらが相まって、小さな花筏(はないかだ)のような風景に。
桜は散っても美しい花です。
最後の最後まで花を楽しみ尽くしましょう!

ライトアップで夜桜を楽しむ

春のやさしい太陽の光で楽しむ桜はもちろん素敵ですが、イルミネーションで飾った夜桜風の桜もおすすめです。

100円ショップでも入手可能なガーランド状のLEDライトを枝に巻くだけで、オブジェのような仕上がりに。
ライトは花の負担にならない用になるべく軽いものを選びましょう。枝にぎゅっと巻き付けるのではなく、ふんわりとまとわせる程度で十分です。

部屋の照明を暗くして、夜桜気分を楽しみましょう。
おうち夜桜は家族やお友達と賑やかに、または一人静かに眺めるのも楽しいものです。
ぜひ、お試しくださいね!

「桜」の基本情報

□出回り時期:12月~4月
□香り:あり(一部品種)
□学名:Cerasus (Prunus)
□分類:バラ科サクラ属
□和名:桜
□英名:Cherry blossom
□原産地:北半球の温帯
□花言葉:精神の美 など


花毎でご紹介している桜のお話

水上多摩江さんが描く「二十四節気の花絵」
第五十二話 春分の花絵「桜」
第二十八話 春分「桜」
第四話 春分「桜」

トップデザイナーによる見立ての花
夢の花屋 第二話 「一目千本桜に見立てる」

谷中直子

第一園芸入社前から学生バイトで働く生粋の第一園芸人。
百貨店系ショップでいわゆる花屋さんを数年経験後、ホテル店に移動しブライダル関係を十数年経験。店長職を経て本社勤務に。
現在は広報担当としてリリースなどの社外発信を担当。