第四十一話 寒露の花あしらい「カラー」
2024.10.08
暮life
日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸のデザイナー、志村紀子がご紹介いたします。
2024年10月7日から二十四節気は寒露に
寒露(かんろ)とは、草花に冷たい露が宿る様子を表した、晩秋の節気です。
今回は流れるようなラインの美しさが魅力の「カラー」がテーマ。一年中出回り、どの季節にも似合う使いやすい花です。
一般的には白い花のイメージがありますが、実はサイズの大小や、さまざまなカラーバリエーションが存在。それぞれ印象が違う表情豊かな花、カラーを使った花あしらいをご紹介します。
花も茎も主役
カラーはしなやかに伸びるシルエットが魅力です。花だけではなく、フレッシュなグリーンの茎も全てを楽しめるように、ボウル型のガラス花器にあしらいました。
美しい色とラインを活かすために向きを揃えて束ねた、カラーならではのしなやかな強さを堪能できるシンプルな花あしらいです。
カラーを束ねる場合は「ビニールテープ」がおすすめです。セロハンテープとよく似ていますが、ビニールテープは水に強いので、カラーのようにツルツルした茎の花材を束ねるのに向いていますし、束ねた部分が目立ちません。
使い方は写真のように、束ねたい位置に巻き付けるだけです。このとき、斜めに巻き付けずに水平に巻くと、見た目も美しく、茎も傷みづらくなります。
さらに、カラーは茎も鑑賞ポイントなので、切り口は水平にカットするのがおすすめです。写真のようにまな板を使って野菜と同じように切るだけ。こうすると茎も潰れづらいので、水揚げも良くなります。
草や穂を合わせる
カラーはいろいろな植物と相性がよい花材ですが、ここではシックな黒のカラー「カントール」を使って、深まっていく秋にぴったりな草ものや穂ものを合わせた花あしらいをご紹介します。
ちなみに、このカントールは生育時の気温によってワインレッドからほぼ黒に近い色までの色幅がありますが、品種としては黒のカテゴリーに分けられています。また、カラーは丈が長く、茎が太いタイプばかりではなく、カントールのようなコンパクトで茎が細いタイプの品種もあります。
さて、ここで合わせたのは「ベアグラス」です。カラーとベアグラスは、先にざっくり束ねてから花器に入れます。そのあとで全体の形を整えると生けやすくなります。
動きのある極細の葉が全体に散らばるようにラフにあしらいましょう。
カラーもベアグラスも茎が細いので、口が狭まった花器を使うと、簡単に格好がつきます。
こちらは上の写真と同じ黒いカラーとベアグラス、そこに「姫利休草」をプラスしました。
実はとても簡単で、水を入れたガラスのボウル型花器に沿わせるようにベアグラス、姫利休草、カラーの順で花材を入れるだけ。茎がしなやかな植物の特性を活かした、ホテルで見かけるような花あしらいです。
次は「クロヒエ チョコラータ」という、黒味を帯びた穂ものを合わせました。黒っぽい花材に合わせて、花器は真ちゅうのピッチャーを選びました。重厚感のある器なので、あえて小さ目でもバランスが取れます。
まるでフジツボのような、ユニークな花器にカラーをあしらいました。前の写真でご紹介した黒のカラーに、黄色のカラー「キャプテンソロ」と姫利休草を組み合わせています。
カラーは個性が強い花器でも難なくきまりますので、使い方が難しいと思っていた器があれば、ぜひ試していただきたい花です。
いろいろな花留め
口の広い花器などの場合、思った位置に花が留まらない場合があります。そんなときには、見えても素敵な花留めを使ってみませんか。
白いカラー「スノーストーム」と艶やかなアンスリウムの葉を束ねて、口が広い花器にあしらいました。花留めは100円ショップなどでも売っているカラーワイヤーを丸めたもの。
このカラーワイヤーは見た目より柔らかいので、都合に合わせて簡単に形が変えられます。
キャンドルと一緒に金色のトレイに載せれば、しっとりとした雰囲気が秋の夜長に似合う、ロマンティックな花あしらいの完成です。
「姫リンゴ」を花留めにしました。黒のカラー、カントールには赤い姫リンゴ、ピンクのカラー「ザズー」には青い姫リンゴを使いました。
こちらも生け方は簡単で、束にしたカラーを花瓶に入れてから、姫リンゴを入れていくだけです。水に浸った姫リンゴは傷みやすいので、2日程度を目安に取り出しましょう。
コンパクトに楽しむ
ピンクのカラー(ザズー)と、パーマをかけた髪の毛のような葉が特徴の「ゴアナグロウ」を試験管をつなげた花器にあしらいました。
カラーは色が違うだけで、全く別の花のようです。かわいらしいピンクのカラーには、繊細で個性的な植物を合わせるとスタイリッシュな雰囲気に仕上がります。
ゴアナグロウはとても茎が細いので、この枝だけを挿す場合はカラーを短くした際に残った茎を一緒に入れると、ぐるぐる枝が回ることを防げます。
小さな器をトレイに集めました。5つの器をトレイに載せていますが、均等に花を入れてしまうとボリュームが出すぎてしまうので、バランスを見ながら本数を調整しています。
丈の長い「アワ」は後ろに、主役ともいえる黄色のカラーは短めにして、ゴアナグロウと一緒に。手前には短くしたアワや、ゴアナグロウを1、2本さりげなくあしらって全体のバランスを取りました。
それぞれ全く違う雰囲気の植物や器ですが、色のトーンを揃えることで上手くまとまります。
こうしたテクニックを使うと、本数が少なくても見ごたえが出る上に、思いがけない組み合わせの発見が楽しめます。ぜひ、お手持ちの器を使ってお試しください。
カラーを最後まで楽しみつくす
お手入れで短くなったカラーにアンスリウムの葉を添えて、小さな器にあしらいました。
もちろんこれだけでも素敵なのですが、ここでは木製のお皿の上に先ほど花留めとして使った姫リンゴも一緒に載せて彩りを添えました。
花が少し物足りないと思ったときには、お皿やトレイに載せてみると収まりがよく見えます。
捨てるには忍びない花があるときに、ぜひお試しいただきたい花あしらいです。
今回使用した花:カラー(白:スノーストーム、黄:キャプテンソロ、ピンク:ザズー、黒:カントール)、ゴアナグロウ、ベアグラス、アンスリウム葉(グリーンアロー)、アワ、姫利休草、クロヒエ(チョコラータ)
「カラー」の基本情報
□切り花出回り時期:通年
□香り:無
□学名:Zantedeschia aethiopica
□分類:サトイモ科オランダカイウ属
□和名:和蘭海芋(オランダカイウ)
□英名:Calla、Calla lily
□原産地:南アフリカ
志村紀子
東京生まれ。国内を代表するホテル、外資系大手ラグジュアリーホテルのウェディングやパーティー装花に携わり、帝国ホテルプラザ店で活躍。現在は第一園芸を代表するデザイナーとして、Noriko Shimuraブランドを展開。他にも社内スタッフ教育部門の講師、対外的なワークショップ講師、各種商品提案、空間装飾のデザインなどを担当している。
第一園芸オンラインショップ「Noriko Shimura」
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Text・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子
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