花の旅人

各地のガーデンや知る人ぞ知る花の名所で
思いがけない花との出会いを楽しむ、花の旅のガイド。

〈北海道ガーデン街道 vol.2 秋編〉第六話 妖精が住む庭 「上野ファーム」

2018.11.20

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2018年9月、震災の風評で北海道ガーデン街道が寂しい状況と聞き、急きょ、秋真っ盛りの帯広~旭川を旅してきました。帯広から富良野へ。新富良野プリンスホテルの一角にある「風のガーデン」を再訪します。


秋の上野ファームは花の色が一層深くなって、初めて訪れた2017年とはまた違う印象のガーデンに。
今回はそんな秋の庭で見つけた花々をご紹介していきます。

パープルウォーク

パープルウォークを彩るのはバーベナ・ボナリエンシス (三尺バーベナ) 。紫の小道はサークルボーダーへとつながっています。

サークルボーダー

パープルウォークを進むと、サークルボーダーガーデンが現れます。
こちらは大きな円を4つのブロックに分け、それぞれテーマカラーを決めて植え込んでいる庭。バラの咲く時季にはより一層色の違いがはっきりします。


秋の花々

上野ファームで見る「秋名菊(しゅうめいぎく)」は洋風な花に思るから不思議。後ろに咲く黄色の花は「ルドベキア」。

ガーデンの中でコンパクトながらパッと目を惹きつける、鮮やかなダリア「ガーデンダリア・ロキシー」。

1m近い背の高さの「バーバスカム・シックスティーンキャンドルズ」。

銅葉と呼ばれる、黒味を帯びた葉色と淡いピンクの花のコントラストが美しい「バーベナ・ハンプトン」。

「ソリダコ・ファイヤーワークス」と白いダリア。

紫の丸い花は「サクシセラ・プラテンシス」、赤い点のような花は「水引(みずひき)」。

「オミナエシ」はレモンイエローの印象がありますが、上野ファームで咲く花はこっくりとした山吹色です。

花色、背の高さの違いなど、さまざまな品種があるアスターですが、こちらは「アスター・フリカルティー ‘メンヒ’」という中型の品種。

上野ファームのノームたち

上野ファームには思わぬところにノーム(妖精)が隠れています。

こちらはチェシャ猫?

昨年は見つけられなかったノームを発見!


ノームの庭

見る角度によって全く表情が変わるのが「ノームの庭」。池が鏡のようになってノームの家を映しだしていました。

ノームの家には門があって、ここから先は入ることができません。
でも、扉の向こうを覗き込んでみると……

バーバスカムとギボウシの葉をブランケット代わりにしてノームがお昼寝中。


射的山

上野ファームの後ろには「射的山」が広がっています。ここは屯田兵の射的訓練場として使われたことから、この名前が付いた場所。
春にはエゾエンゴサク、カタクリ、オオバナノエンレイソウといった北海道ならではの花が丘一面に咲いて、北海道の春を告げる美しい光景が広がるそうです。

見た目は山と言うより、丘といった方がぴったりな気がしますが、頂上まではなかなかの急こう配。頂上には2017年に訪ねた時には無かった、7色の椅子が並んでいて、フォトジェニックな場所に。ここに座って、上川盆地を囲む山々を見渡しながらひと休みするのもおすすめです。

射的山の麓にもベンチが。この時もここに座ってとても楽しげにお話しをされている方がいらっしゃいました。今のこと、昔のこと……そんな話を古い友人とずっと話していたい、とてものんびりとできる場所です。

この日は講演があるという事で、お忙しい間を縫って、上野砂由紀さんからメッセージをいただきました。
「季節によって魔法のようにかわる庭 それが上野ファーム」
上野さんの言葉通り、2回目のこの場所はまるで違うガーデンのようでした。その違いは夏の上野ファームを訪ねた際の写真をぜひご覧ください。

次回はこの旅の最終目的地「大雪森のガーデン」を訪ねます。


北海道は元気です。

北海道胆振東部地震の一報を知った時、まず思い浮かんだのは、私の北海道の唯一の知り合いであるガーデン街道の皆さんでした。
被災の状況が報道される中、あの庭はどうなっているのだろうかと心配が募り、お目にかかったガーデナーの皆さんに連絡を取り、状況を伺いました。

判ったのは、震災発生時は停電こそあったものの、どのガーデンも数日後には通常に近い公開を始めたこと。
震災の影響はほぼ無く、安全だということ。
でも、北海道の震災ということで、帯広も旭川も被災しているように思われて、入場者が激減していること。

花屋としてできることは何か。
被害にあわれた方々に寄付をすることもひとつの方法だけれども、花屋は花屋のやり方で応援する方法はあるだろうか…

何より、紅葉が始まった美しい秋の庭が、人の目に触れないまま冬じまいしてしまうのは本当に惜しい。
こんな時だからこそ、植物が持つ力が役に立つのではないか…

そんな思いから、北海道ガーデン街道の魅力をお伝えすることで、ひとりでも多くの方にガーデンを知って、訪ねてもらうことが、花屋にできる復興のお手伝いではないかと考え始めました。

「微力だけど無力じゃない。」
かつて神戸の震災時に50ccバイクに乗って、被災者が欲しいものを細かく聞き取りながら、必要な物資を届けるボランティアをなさっていた作家の田中康夫さんの言葉です。
大きな力にはなれないけれど、私たちにできることをやってみる。
それが今回の旅のテーマです。

震災発生から20日後、植物も人も元気な「北海道ガーデン」の姿を7回に渡ってお伝えします。


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〈北海道ガーデン街道 vol.1〉第八話 母と娘が作った北海道ガーデン「上野ファーム」

上野ファーム

北海道旭川市永山町16丁目186番地
https://uenofarm.net/
冬季休業期間があります。営業時間、入館料などの詳細につきましては上野ファームのWEBサイトをご覧ください。