花の旅人

物語のある、
花の名所を楽しむ旅

vol.5 〈秋のバラ編〉 第二話:バラの名門 「京成バラ園」

2019.12.04

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「杏奈(あんな)」
アプリコット色から桃色のグラデーション花色と、ほのかなフリルの花が絶妙なバラ。春から秋まで繰り返し良く咲き、コンパクトなので鉢植えとしても楽しめる。

趣味の園芸で講師を務める、京成バラ園のヘッドガーデナー村上 敏さんに園内をご案内いただきながら、バラについてのお話を伺いました。

村上さんは大学卒業後から現在まで京成バラ園に勤務。バラとの出会いはご実家にあった「クイーンエリザベス」から。園芸は山野草から始まり、ご自宅では草や樹木を合わせると230種、その中でバラは45品種を育てていらっしゃる園芸家です。

「フリュイテ」
とても豊かな表情の花で、気候・株の状態で色の深みが変化。基本的には黄色~橙~チェリーレッドの順で色が移ろい、特に秋の花は美しいグラデーションが楽しめます。

バラ園は育てたいバラを見つける場所

「バラって、ものすごく強いのから、めちゃくちゃ弱いもの、大きいものから極小のものまで全てがバラと呼ばれるので、皆さんが訳わからなくなってしまうんです。だから(バラの)カタログの写真だけで選んでしまうと、時々たいへんな目に合います(笑)
このバラ園で自然光の中で色を見て、香りを嗅いで…あとは実際に植えた時の姿や特徴を含めて、見極めていただきたいなと思います。」

「アプリコットキャンディ」
庭植え向きの花付きが良い、大輪種。開くにつれて花弁が波打ってくると、やわらかい香りが漂ってきます。黒点病・うどん粉病に強く、丈夫でしっかりした株に育ちます。

秋に咲くバラはありえなかった?!

「バラが秋に咲くようになったのも、たかだか200年くらいの話です。18世紀、中国にあった四季咲きのバラがヨーロッパに渡って、形を変えて現代のバラになっているんです。17世紀までのバラは初夏に咲くものがほとんどで、もう一度ちょろっと咲けば大騒ぎになったようです。四季咲きのバラは、200年前に中国で小輪の四季咲きのバラが見つかってから、品種改良が始まりました。現在このバラ園に咲いているような、大輪で四季咲きのバラは誕生してからまだ150年しか経っていないんです。」

「薫乃(かおるの)」
2008年、京成バラ園作出。このバラの魅力は何と言ってもダマスク系とティー系の混合した上品で素晴らしい香り。芳ばしい薫りとその花姿の美しさから「薫乃」という名が付けられました。

香りのバラ

京成バラ園作出の中で、最も香しく、深みのある香りが特徴の「薫乃(かおるの)」。村上さんが一番最初に香水にしたいと思われた品種です。
「バラの香りの成分って、もう500成分くらいわかっているらしいんですけど、その中で大体300種類くらいがよく香るらしいです。ですからそのバラの品種によって、成分が入っていたり入っていなかったり、量が多かったり少なかったりということで、バラによって全部香りが違うということらしいんですね。」

京成バラ園にはオリジナルのフレグランス類があるほど、芳香バラの品種開発や育成に力を入れています。

「バラの歴史自体が香りからスタートしているんです。もともとバラは香料として発展した作物で、鑑賞用になったのはつい最近のことです。もともと花の色と香りはリンクしていますが、どんどん交配が進んで、香りも色も複雑になってきています。もう50年もすると関係なくなってくるんじゃないでしょうか。あれ、これって黄色の香りだよね?っていうピンクや赤のバラが出てきてもおかしくないと思います。」

「レオニダス」
花付き、花持ちが良い品種。気温が低い時の花はまさにチョコレート色のシックな花に。耐寒・耐病性に弱く、上級者向きのバラ。

秋が最も美しい品種

ベルギーのチョコレートブランド”レオニダス”に捧げられたバラ、その名も「レオニダス」。最高潮の色合いが出るのは秋といいます。
「このバラは温度で色の出かたが全く違って、夏はきれいな朱色になります。涼しくなってきた時にはじめて本来のこの色が出るんです。この花のように季節で色が変わるバラも楽しいんですが、いつも同じ発色のバラがいい人もいて、こういったバラは消えて行く傾向にありますね。でも、春秋同じ色のバラだとしても、やっぱり秋の方が色が鮮やかに出ます。特に暗く沈んだ色の花は秋の方がきれいです。」

バラの実「ローズヒップ」は秋を告げる風物詩。バラ好きの中でも季節の変化を楽しむ人はこのローズヒップを大事にするといいます。

「レッド レオナルド ダ ヴィンチ」
ADR受賞品種。クリムゾンレッドといわれる濃く、明るい赤色の花が、咲き進むにつれてピンクを帯びた花色に。耐寒・耐病性に優れた、初心者にもおすすめの育てやすいバラ。

バラの品種の選び方

「秋は、めっちゃ手かけないと四季咲きのバラは咲かないので、難しいんです。ADRのバラであれば放っておいても、たくさんは咲かないけど、ポツポツ咲きます。ただ、今までのバラって放っておくと年々株が小さくなっていって、5年もすると無くなってしまうバラが結構ありました。このようにバラは多種多様なのに、そういったことを知らずに植えると大きくこそなるけど、一輪二輪しか咲かないとか。もしくはどんどん枯れていってしまったり。
それが最近は、大きくならずにそこそこ咲いて、枝のボリュームも出て、秋でもポツポツ咲いてくれる品種が出てきたので、選ぶのであればそういった確実に咲く「新しい品種」がお勧めですね。本当に好きだったら、今度は花で選んでいただいて、それに向けて腕を磨いていただくという。本気でバラをやると、ほぼ全ての植物の園芸知識が手に入ります(笑)よっぽど高冷地とか、乾燥地に生えてものは別ですよ(笑)普通に温帯地で生えてる植物の作業工程が(バラには)全部入ってるので。だから植え付けとか植え替えとか肥料とか色々ありますけど、切るとかにしても全部同じですから。そうすると剪定の仕方も見えてきます。」

「ガーデンオブローゼス」
育てる場所の日照時間があまりなく、鉢植えでも育てられる、といった厳しい条件に耐えるのがADR受賞品種の「ガーデンローゼス」。しかもコンパクトで香りがあって、丈夫で四季咲き、そしてローメンテナンスという、村上さんがお気に入りのバラ。京成バラ園でも午後は日影になってしまう場所に植えられていますが、たくさんの花を付けています。

バラ初心者が品種を選ぶなら”ADR”

ADR(Allgemeine Deutsche Rosenneuheitenprüfung)とは、ドイツで行われている、世界でも難易度の高いバラの賞。ドイツ国内11か所のテスト庭園で3年間に渡り、病害対策の化学薬品を使わず、冬の手入れを全くすることなく育てて評価試験を行うといった、たいへん厳しいものです。ちなみにドイツは北海道と同じ程度の緯度で、寒さは相当なもの。
花の美しさはもちろんですが、耐寒性、対病虫害性をクリアし、その上でたくさんの花を咲かせるバラにだけ与えられるのがADRの称号です。更に、受賞後も時を経て丈夫ではないと判断されれば、この称号ははく奪されてしまう、信頼性の高い称号でもあります。「ADRのバラはこれからの時代の主流になっていくだろうと思います。手をかけなくても毎年ちゃんと大きくなって、一年の中で何回か繰り返し咲く。まさに初心者にぴったりのバラなんです。もちろん手を掛けるほど一杯咲くんですけどね(笑)」

「ファビュラス!」
次から次へと花を付け、耐病性・耐寒性に優れた、初心者にもおすすめの品種。

京成バラ園のバラはどれも一株が大きく、背が高いものが多いです。
これは無理な剪定をすると植物が弱るため、剪定は必要最低限にとどめているからとのこと。
ちなみに、現在咲いている秋バラの剪定は9月に入って直ぐに行い、10日程度でほとんどのバラを切り終えると、そこから1か月半でここまでの花が咲くといいます。
この後、傷んだ花から落し、次に大きく剪定するのはツルバラが1月、花壇のバラは2月に行うそうです。

「自然風庭園」は村上さんおすすめの場所。「早春のカタクリから始まって、次々山野草がいっぱい生えます。エビネがあったりクマガイソウがあったり。だから早春の林の中は植物好きにはめっちゃおすすめですね。」

「ベルサイユのばら」のテラスでアントワネットの手を取る、お茶目な村上さん。

ガーデンで大切にしていること

「魅せるガーデンであることですね。ですがうちの場合は京成電鉄が運営しているので、まずは安全第一(笑)だから狭い通路もありえないし、足元の悪いところもダメですし。そんなわけで庭はバリアフリーで、車いすの方にも対応しています。あとはもう見せ場を作ることだと思うんですよ。特にここで写真撮るといいよ!というスポットを作って、それがガゼボだったり、『ベルサイユのばら』のテラスだったり。更にバルコニー越しに見るとお姫様気分を味わえるとか、色々と工夫しています。」

「ラルサ・バビロン」
古代都市の名前が付いたこの花は、中近東から中国のウルグアイにかけて生息する、野生種の遺伝子を引き継いだバラ。うどんこ病に強く、特に丈夫で育てやすい品種です。

最後に村上さんに、京成バラ園以外でお好きな庭について伺いました。
「ああ~なかなかむずかしいですね(笑)自分は割と宿根草が好きだから、上野ファームが好きですね。眞鍋庭園も好きですね。凄く素敵です。バラの管理が行き届いてる、という点では、長野の一本木公園と、北九州にある響灘緑地のローズガーデンは手入れが素晴らしいです。」

「夢」
1994年、京成バラ園作出。ティー系の香りがほのかに香る、花付が良く、コンパクトにまとまる、育てやすい品種。

お話を伺った1時間半を文字に起こしたところ、なんと約23,000字に!ほぼ全てがバラについての内容です。
いかに村上さんがバラを愛されているのかが分かる、プロならではの貴重なお話でした。
京成バラ園には、春バラの時季にも伺っていますので、次回は春バラのシーズン前に今回掲載しきれなかったお話と合わせて、ご紹介いたします。お楽しみに!

京成バラ園

〒276-0046 千葉県八千代市大和田新田755

https://www.keiseirose.co.jp/garden/
営業時間 10:00~17:00 (最終入園 16:30)
定休日 5月・6月・10月・11月は無休
※営業時間・定休日・入園料は季節によって変わります。最新情報は京成バラ園のWEBサイトをご覧ください。