花の旅人

物語のある、
花の名所を楽しむ旅

vol.4 〈北海道ガーデン街道・秋編〉第三話:森林浴を楽しむ秋の庭 「真鍋庭園」

2018.11.13

travel

2018年9月、震災の風評で北海道ガーデン街道が寂しい状況と聞き、急きょ、秋真っ盛りの帯広~旭川を旅してきました。

帯広3件目は樹木が主役の「真鍋庭園」。紅葉の少し手前、木々が色づきはじめた庭を散策していきます。

まずは展望デッキに上ってみました。全体を見下ろすと、多種多様な色合いの樹木が植えられていることがわかります。常緑のコニファー(針葉樹)の中に、広葉樹が秋の訪れとともに、カラフルに彩りを添えています。

昨年夏に訪れた時は、写真を撮りそびれてしまった日本庭園。地下水が湧き出る「鯉の池」のほとりに立ってみると、鏡のような水面に秋の青空写しだされていました

色とりどりの木々

約24,000坪の広さがある真鍋庭園は、園内を一周すると約1時間。庭というより、森の中にいるような気分になりますが、歩道が整備されているのでとても歩きやすく、1本1本の木を眺めながら、ゆったりと楽しめるつくりです。

パラソル型になるヨーロッパの白樺「枝垂れ白樺 ヤンギー」に、紅葉した夏蔦(ナツヅタ)が絡まり傘の軸のよう。

真っ赤な実を付けた高木を発見。これはイチイ(一位)の木の変種「キャラボク(伽羅木)」というコニファー。
この木はお線香などに使われる伽羅に似た香りがすることから、この名が付いたとされます。

ひと際目立つ、鮮やかなライムグリーンの大木は「ニセアカシア フリーシア」。夏は写真のようなライムグリーンの葉色で、春の新芽と秋は鮮やかな黄色になることから、「ゴールデンアカシヤ」や「黄金ニセアカシア」と呼ばれることもあります。初夏には藤のような白い花をつけ、甘い香りが漂います。

モネの柳

真鍋庭園で私が最も好きな木が、この地に植えられて34年目、高さ20mの「セイヨウシロヤナギ トリステス」です。
フランス産のこの柳は、モネの睡蓮シリーズに描かれている木と同じ品種。ヨーロッパでは放牧地帯によく植えてあり、薬にも使われる整腸成分が含まれているからか、馬や牛、羊や山羊などが垂れ下がる葉先を食べてしまい、前髪を切り添えたような姿になってしまうとか。家畜のいない真鍋庭園では現地の姿に合わせて、わざわざ刈り込んでいるそうです。

枝垂れる枝の内に入ってみれば、まるで大きな傘の中にいるよう……葉と芝の緑に包まれ、とてもリラックスできる空間です。
写真ではわかりづらいのですが、この葉は裏が銀白色。そこから「セイヨウシロヤナギ」の名が付けれられました。

ちなみに、柳というと和の印象がありますが、それらは「バビロニカ」という品種。もともと日本には枝垂れ柳は無く、仏教伝来とともに中国から渡ってきた品種なのです。

真鍋庭園より画像をお借りした、霧氷(むひょう)で真っ白に染まった「セイヨウヤナギ トリステス」。

これは極寒の日に(帯広の冬は気温が-25℃ぐらいにまで下がることがある)庭園近くの札内川から来る川霧の水分が木に付着し、放射冷却によって凍ったものですが、昼には溶けてしまいます。年に一、二度、ごく短い時間にしか見る事のできない貴重な姿です。

ニジマスの池

ニジマスが泳ぐ水のきれいなこの池は、真鍋庭園の奥にあり、木々に囲まれたとても静かな場所。到来にはまだ早い時季でしたが、ここには野生のカモが住み着いているそう。

色づいた木が水面に映り、透明な水と不思議なコントラストを生み出していました。

午後の木漏れ日が帰り道を照らします。

真鍋庭園のアイドル「エゾリス」にまた出会えました。

庭への思い

この日、五代目園主の眞鍋憲太郎さんは出張でご不在。眞鍋さんに代わってスタッフの松尾那州果さんが、この庭への思いを伝えてくださいました。

メッセージの「目を閉じて『庭を感じる場所』」とは、目を閉じても香りや音、葉の触感から庭にいることを感じられる……それが真鍋庭園という庭、そんな気持ちを込めた言葉をいただきました。

この記事を書くにあたって、お目にかかれなかった園主・眞鍋憲太郎さんに品種名が分らなかった樹木について該当写真を送りってお尋ねしたところ、即、個々の特性を深く濃く、そしてとてもユニークに説明された返答が。
二千数百種近くの樹木がある庭で、これは全ての木を把握しているからこそ。プロフェッショナルとはこういうことなのだな、と思った出来事でした。


一度目より二度目の方がより面白い、真鍋庭園は知れば知るほど楽しみが増す庭です。

次は帯広4つめの庭「紫竹ガーデン」へ。

北海道は元気です。

北海道胆振東部地震の一報を知った時、まず思い浮かんだのは、私の北海道の唯一の知り合いであるガーデン街道の皆さんでした。
被災の状況が報道される中、あの庭はどうなっているのだろうかと心配が募り、お目にかかったガーデナーの皆さんに連絡を取り、状況を伺いました。

判ったのは、震災発生時は停電こそあったものの、どのガーデンも数日後には通常に近い公開を始めたこと。
震災の影響はほぼ無く、安全だということ。
でも、北海道の震災ということで、帯広も旭川も被災しているように思われて、入場者が激減していること。

花屋としてできることは何か。
被害にあわれた方々に寄付をすることもひとつの方法だけれども、花屋は花屋のやり方で応援する方法はあるだろうか…

何より、紅葉が始まった美しい秋の庭が、人の目に触れないまま冬じまいしてしまうのは本当に惜しい。
こんな時だからこそ、植物が持つ力が役に立つのではないか…

そんな思いから、北海道ガーデン街道の魅力をお伝えすることで、ひとりでも多くの方にガーデンを知って、訪ねてもらうことが、花屋にできる復興のお手伝いではないかと考え始めました。

「微力だけど無力じゃない。」
かつて神戸の震災時に50ccバイクに乗って、被災者が欲しいものを細かく聞き取りながら、必要な物資を届けるボランティアをなさっていた作家の田中康夫さんの言葉です。
大きな力にはなれないけれど、私たちにできることをやってみる。
それが今回の旅のテーマです。

震災発生から20日後、植物も人も元気だった「北海道ガーデン」の姿をこれから7回に渡ってお届けします。

» 「真鍋庭園」園主、眞鍋憲太郎さんのインタビューと夏のガーデンの様子はこちらをご覧ください

真鍋庭園

〒080-0832 北海道帯広市稲田町東2-6

http://www.manabegarden.jp/
ガーデン営業期間  4月下旬~12月初旬 期間中無休(2018年の営業期間は12月2日(日)まで)
営業時間  8:00 ~ 日没(6月~8月は8:00 ~ 19:00 最終入場18:00)※季節により時間変更の場合あり
入園料  大人(高校生以上)800円、小・中学生200円、幼児無料
専門ガイドによる有料ガイドツアー有

※最新情報と詳細につきましては真鍋庭園のWEBサイトをご覧ください。