二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第四十五話 立春の花あしらい「ストック」 

2025.02.03

life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸のデザイナー、志村紀子がご紹介いたします。


2024年2月3日から二十四節気は立春に

立春とは、二十四節気の一番目の節気で、暦の上ではここから春がはじまります。

節気は春に入りましたが、実際の気候は冬の最中。でも、花屋は春真っ盛りで、春の花が豊富に揃う時季です。
そんな春の花の中から、今回は古くから親しまれてきた、香りのよい「ストック」がテーマ。素朴で懐かしい雰囲気があるストックのイメージがちょっと変わるような花あしらいをご紹介します。

ユニークな花器を使ってみる

まるでオレンジジュースが入っているようなデザインの花瓶に、淡い黄色のストックをあしらいました。
色付きの花器は難しく感じるかもしれませんが、こんな風に花の色と器の色を合わせると、少ない本数でも華やかです。ここでは3本のストックを使っていますが、茎が枝分かれしているので、短めに切るとブーケのような雰囲気に。
花瓶以外にも、マグカップや空き瓶など、色がある器で楽しんでいただきたい花あしらいです。

試験管をつなげた花器に、ピンクのストックと「コデマリ」をあしらいました。
挿し口がいくつもある花器は少ない本数でも簡単にバランスよく生けられますので、持っていると便利な器のひとつです。
この花あしらいでは、枝分かれしている部分でカットしたストックを1本ずつ生け、アクセントにコデマリを添えました。
春が盛りのストックとコデマリは春らんまんの雰囲気になる、相性ぴったりの組み合わせです。

春ならではの組み合わせを楽しむ

ストックに「斑入りコロニラ」と、春だけ出回る「ゼンマイ」を合わせました。
どれも線の細い植物なので、細い花器を選んで縦のラインを強調しています。花器は一つだけでもよいのですが、大小の花器を組み合わせると、空間に広がりを感じる花あしらいになります。
もし、生けた花に対して、空間が広いと感じる場合には、この写真のようにトレイを使うとバランスが取りやすくなるかと思います。

特に春は旬が短い植物が次々と出てきますので、気になるものを見つけたら、即決するのがおすすめです。

今度は春の野山をイメージして、ストックとコデマリを生けました。
コデマリの動きを活かして、あちこちに向けて生けると自然な雰囲気になります。一見すると剣山や給水スポンジを使っているように見えますが、実は余った枝を使って花を留めています。

枝を使った花留めのやり方はさまざまありますが、ここでは、器の内側にあわせて枝を切り、(洗濯バサミの要領です)枝の端に入れた切り込みで花を留めています。

花留めの作り方はとても簡単。花材を挟むための切り込みを入れるだけです。今回は花材としても使用しているコデマリの枝を使いましが、他にも雪柳など弾力がある枝は花材を挟みこみやすいのでおすすめです。

素朴さを活かす

ストックの気取らない素朴な魅力が活きるのが、バスケットにざっくり投げ入れた花あしらいです。
バスケットの中に「隠れるサイズ」の花瓶や空き瓶などに水を入れて、そこに花を生けます。長さはお好みですが、茎を目立たせない方がバランスよく見えるでしょう。
お手入れが進んで花丈が短くなったときにもおすすめの方法です。

バスケットに生けたピンクのストックに、黄色のストックと黒のパンジーを加えました。
花を増やしたいときには、全てを一つの器に入れなくても、追加したい花を別の器に生けて一緒にバスケットに入れてみるのもおすすめです。バスケットの中で置く位置を変えてみると雰囲気が変わるので、お好みの位置に動かしてみましょう。

花のティーパーティー

お手入れを進めて短くなった花や、生ける都合で切り取った花などを集めて、華やかに楽しんでみましょう。
飾り方はアイデア次第。ここではケーキスタンドやガラスのティーセットを使って、ティーパーティー風に飾りました。水を入れた小さな器をたくさん用意して花や小枝を生けたら、ケーキスタンドに並べます。ティーポットやティーカップにも花を浮かべて。
小さな花もこんな風にすると最後の最後まで活かすことができますので、おままごとの気分で楽しんでみてはいかがでしょうか?

「ストック」の基本情報

□出回り時期:10月~5月
□香り:あり
□学名:Matthiola
□分類:アブラナ科 アラセイトウ属
□和名:紫羅欄花(あらせいとう)
□英名:Stock
□原産地:南ヨーロッパ


志村紀子

東京生まれ。国内を代表するホテル、外資系大手ラグジュアリーホテルのウェディングやパーティー装花に携わり、帝国ホテルプラザ店で活躍。現在は第一園芸を代表するデザイナーとして、Noriko Shimuraブランドを展開。他にも社内スタッフ教育部門の講師、対外的なワークショップ講師、各種商品提案、空間装飾のデザインなどを担当している。

第一園芸オンラインショップ「Noriko Shimura」
二十四節気の花あしらい 第四十三話 大雪の花あしらい「ダイヤモンドリリー」 
二十四節気の花あしらい 第四十一話 寒露の花あしらい「カラー」
夢の花屋 第三十二話「ヴェネツィアのカーニバルに見立てる」
夢の花屋 第三十話「ニューヨークのクリスマスに見立てる」

Text・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子